アジア不動産投資ツアーに参加して-4

(注)執筆当時の法律に基づいて書いていますのでご利用は自己責任でお願いします。


今回は、前回までの「アジア不動産投資ツアーに参加して-1」「アジア不動産投資ツアーに参加して-2」「アジア不動産投資ツアーに参加して-3」に続き、「アジア不動産投資ツアーに参加して-4」と題してお送りします。

海外不動産投資、税金は?

例えば、日本の国内居住者が、タイで不動産(コンドミニアム=区分所有マンション)を購入して、貸し出しを行い、毎月家賃収入が入ってきたとします。
タイという日本国外にある不動産から得た収入ですが、これ、税金はどうなるのでしょうか。

答えは、タイと日本の両方で税金の申告が必要となります。
(更には、日本の申告は日本の税法にのっとって計算しないといけませんので、投資する地域によっては減価償却や費用の考え方で異なることもよくありますのでご注意ください。このあたりは不勉強な税理士では対応が難しいものと思われますので、税理士選びは慎重に。)

ただし、二重課税を排除するために、タイで払った税金は、日本の申告の際、原則として控除することができます。

こういった取り扱いは、例えば金融商品でも同様となりますので、金融商品から生じる利子、配当、売却益などについて、無申告の方がいればご注意下さい。
(日本においては、これらの所得が年間20万円未満であれば申告不要という制度もあります。また、外国における税金の申告においては、国によっては売却益であるキャピタルゲイン非課税というケースもあります。)

実際、日本でも平成26年から、「国外財産調書制度」が出来て、国外に5,000万円超の財産が有る場合は、確定申告時期に届出をするようになりました。

今後は、これまで表に出ていなかった国外財産から生じる所得に対しても、日本政府はきちんと納税してもらうように今まで以上に働きかけていくようです。

アメリカ不動産投資を使った節税は本当か?

今ちまたで流行っているのが、「アメリカ(例えば、カリフォルニアやマイアミ)で中古不動産投資をして日本で節税を図りましょう!」というものです。

本当でしょうか?
本当ならカラクリはどうなっているのでしょうか?

本当かどうかの答えは、嘘でもあり本当でもあります。その説明のために、カラクリをお話しします。

アメリカでは、場所や築年数にもよりますが、よく外国人が不動産投資に選択する物件では、価格の割り振りとして、土地:建物=2:8ぐらいが多いです。(このあたり日本とは大きく異なります。)
そして、日本と違い、築20年、30年というのはザラで、そのような物件でもきちんと客付けが出来て不動産収入を確保できます。

日本の税法では、建物に対しては耐用年数に応じて減価償却費用を計上できますが、木造居住用物件の耐用年数は22年です。
しかし、この22年というのは新築を想定していますので、例えば、これが築25年であれば、耐用年数をすべて経過しているということで、「法定耐用年数×0.2」というのが使えるのです。

つまりこの場合、22年×0.2=4年(端数切捨)の耐用年数が使えます!

すると、ざっくり計算ですが、2,500万円のアメリカ中古居住用不動産投資を年初にしたと仮定して、2,500万円×0.8(建物部分を算出)×1/4(1年分の概算償却費)=500万円が、不動産投資をした年に経費計上できるのです。

そして、この時に生じた不動産投資の赤字を、日本でもらっている給与所得や他の不動産所得と損益通算できます。

すると、税金が戻ってきたりするケースもあります。
節税になりました・・・・ね・・・?

しかし、実はこれでは片手落ちの話なのです。
どういうことかというと、実はこの手の節税対策は、「永久節税対策」ではなく「税金繰延対策」だからです。

つまり、不動産投資を実行した2,500万円のうち500万円を早期に費用計上できたということだけで、いずれの不動産所得や売却時の譲渡所得においては、その分、経費計上できなくなるのです。
つまり、何年後かの不動産所得では大きく黒字となる可能性が高いですし、売却をするときには、既に経費に計上した500万円は経費にならず多額の売却益となります。

おわかりいただけるでしょうか。
このような節税海外不動産投資は、単に経費を先食いしているだけ、ともとれるのです。

とはいえ、この仕組みを理解した上で、将来どんな事態になるかはわかりませんので、そのためにとりあえず目の前の税金を減らすという選択肢は間違いでありません。
また、不動産の保有期間がおおむね5年超で税率は2割となりますので、人によっては出口課税を含めたトータル税金が減る、というケースもあります。
このような方々には有効な手段となるかもしれません。

ということで、アメリカの中古不動産投資を使った節税は本当でもあり嘘でもあるのです。

逆に、アジア富裕層が日本不動産を買っています

これまで日本人による海外不動産購入について述べてきましたが、実は逆に、海外富裕層、特にアジア富裕層が日本不動産を購入されているケースというのが近年急増していますので、その話です。

私の周囲でも、多数の「アジア人」や「アジア人が株主の会社」が日本不動産を、それこそ、一軒家からマンションの一室、一棟モノ、土地等、色々と購入されています。
その時によく行われるのが、自国の通貨を担保にして、日本で借入を行い、不動産を購入するというやり方です。

このやり方であると、自国の通貨における高い受取利息を享受しつつ、日本で低金利のローンを組むことにより、投資をした段階で、金利差2-3%得するということになります(とはいえ、このスキームを日本人が組む場合には特に為替には要注意です、為替が動いて為替差損となれば、金利差が帳消しになることもしばしばですので)。

このようなスキームを組むには、一般的には、自国の銀行が日本に支店を設けてくれないとできないのですが、近年、アジアの金融機関は欧米勢が撤退するなか積極的に日本支店開設に動いています。

–日経新聞2014.8.29–
外銀拠点アジア勢台頭、総資産5年で4倍 欧米勢は撤退相次ぐ

アジアの銀行が日本国内で存在感を高めている。
日本に進出するアジアの銀行数は今年6月末時点で27行となり、欧州と北米を合わせた25行を上回った。
アジア勢の総資産は8兆円を超す勢いで5年で4倍に増えた。
市場拡大を見込みにくい日本から欧米勢が相次ぎ撤退する一方、資金需要が旺盛なアジアの銀行が日本で低利資金の調達を増やしている。
(中略)
規模拡大が特に目立つのが中国の銀行だ。
日本に進出する5行の預金残高は約1兆1000億円で外銀全体の1割程度を占める。
運用難の大手銀行や保険会社が高めの金利を提示する中国の大手銀に預けているもようだ。
最近では日本の個人にも人民元建ての預金を提供している。

アジア勢の日本での業務は従来、本国への送金サービスが主流だったが、最近は日本に移住した在日中国人向けに住宅ローンも提供し始めた。
交通銀行は居住用と投資用の2種類を用意する。

KPMGジャパンの調べでは14年3月期の経常利益が外銀で最も多かったのは中国銀行(103億円)。
上位20行の7行をアジア勢が占めた。
直接金融の分野ではゴールドマン・サックスやモルガン・スタンレーなど欧米勢が強いものの、間接金融分野では主役の交代が起きている。
課題もある。
最も重要なのは預金者保護だ。
現地法人を設立しないかぎり、外国銀行の預金に日本の預金保険法は適用されず、日本政府は預金を保護できない。
—————————–

ボーダーレス社会2つの誤解

国際社会の一員として、更にいえば東南アジアの一員として生きるということが、この閉鎖的な日本でも、今後益々求められる社会になると思います。
まさに、何年も前から言われてきた国際化社会の到来が、今まさに日本に来ています。

今まで書いてきた、日本人による東南アジア不動産投資や東南アジア人による日本不動産投資もその表れの1つです。

益々、国境の無いボーダーレス社会に突入です。
「ボーダー」は「国境」で「レス」は否定語ですので、ボーダーレス社会とは国境の無い社会という意味です。

この大きな流れは決して変わることがありません。
変えられないものには無意味に抗うことなく、素直に素早く受け入れましょう。
更には、国際化社会、東南アジア社会の到来を楽しめるようになりたいものです。

その時に最も必要なのは、決して英語力ではありません(あるに越したことはありませんし、今日からでも勉強をスタートするのには大賛成ですが)。
最も必要なのは、自国のことであり自国民のことであり、自分が所属する社会のことであり、何より自分自身についてです。

ものごとは、必ず表と裏が存在します。
白と見えているものにも、常に黒の影があります。

ボーダーレス社会になればなるほど、日本に住んでいるという事、日本人であるという事、もっといえば家族という一番閉鎖的なものに、よりスポットライトが当たります。

逆説的ですよね。

でもそれは、既にボーダーレス社会として何十年も過ごしてきている他の東南アジアの人々を見れば実感します。
東南アジア旅行初日の晩に必ずといっていいほど、ホテルのベットでホームシックにかかりましたが、その理由も今となっては理解できるような気がします。

東南アジアをこの何年間か何度か放浪して、国籍も性別もいろんなものがごった煮のようなチャンブル状態に放り込まれることがありましたが、いや放り込まれるために行ったのですが、そこで問われたのは、私が何を考えているのか、私が何をしてきたのか、私が今この場で何を出来るのか、私、私、私、・・・。

国際化社会の中で更にうまくやっていくには、「自立した個」というのも重要です。

1人の裸の人間として、東南アジアの方々と接するのは、最初少し緊張しますが、とても楽しいものでした。
出来れば、私たちの子供世代にも、そういった国際化社会、東南アジア社会で生きるということを、是非「楽しんで」もらいたいものです。

そのためには、「英語」ではなく「国語や社会、算数」をしっかりと勉強させておくことです。

そのためには、ボーダーレス社会なんだからと言って「外国に行くことや外国人の友人をつくることや、日本や日本人であるということを軽視することや、所属している社会である学校・クラブ・クラス・地域社会を軽視することや、家族を軽視すること」ではなく、ボーダーレス社会だからこそ「日本や日本人であるということを深く理解しよう、所属している社会でがんばろう、家族を大事にしよう」とならないといけません。

ここよく誤解されていると感じますので最後に記しておきます。

先述しましたが、国際化社会の中で充実してうまくやっていくには、「自立した個」が必要です。
そのためには、中学生以上の子供を持つ親は、「カマッテちゃんや小言の多い親」ではなく「しっかりと見守りながらも、不要な声掛けをせずホッタラカシの親」になることではないかと思います。

自立した個というのは、決して大人が口で説明して子供が身に付けられるような類(たぐい)のものではありません。

自立した個というのは、子供が自ら疑問や違和感を感じて行動して、自分の中の自分と会話をして、友達や親とも議論して、時に刹那的な安易な言動も交えながら、そしてそれらを非効率的に繰り返して、結果、自問自答の中からか、友達とのちょっとした会話からか、本の一節に共感してか、ちょっとずつ少しづつ芽生えていくもののように思います。

でも、そうすると、子供は必ず失敗しますよ。
それでいいじゃないですか。
そうやって、僕らも大人になってきたのですから。
失敗を経験させてあげられる親ほど、尊いものはないと思います。
諸先輩方がおられる中、偉そうに申しまして恐縮です。。。

※最近日本人について異質に感じることですが、成熟社会であり守るべき事が多いので仕方がないのかもしれませんが、過度に保守的な人が多くなってきたなぁと、そしてそれが子供の成長にも大きく影響しているなぁと。
もっと人間は本来、自分のやりたいことを自由にチャレンジしてきたのではないのかなと思います。
チャレンジすれば失敗もするけど、それでいいのではないかと思います。

※海外永住権の話や、マレーシアリンギットなどの金融商品の話もしたかったのですが、流石にこのシリーズも4回目で飽きもきているでしょうから、いずれまたの機会ということにします。このシリーズはこれで終了です。

この話が経営者・資産家の皆様のお役に立つことができれば幸いです。

メール通信№405


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