関西EPA研究会に参加してみて

(注)執筆当時の法律に基づいて書いていますのでご利用は自己責任でお願いします。


全国初?

先日、関西の16の商工会議所が主催となって、「関西EPA研究会」が発足されました。
ニュースなどにも出たのでご存知の方もおられるかもしれませんが、EPAを中心としたこのような研究会は、全国でも初ではないかとのことです。

メンバーは30社ほどで、大手製薬会社や大手精密機器製造会社など名だたる企業が参加されていました。
4月が第一回の会合で、来年3月までに6回以上の研究会が開催される予定です。

今回は、前半約2時間で経済産業省通商政策局経済連携課の方が講演をしていただき、後半約1時間で分科会として各グループに分かれディスカッションをするというものでした。

この関西EPA研究会に私も参加しました。
分科会では、EPA基礎講座に参加しました。

EPAとは?

ところで、このEPAとはどういったものかご存知でしょうか。
EPAとは、Economic Partnership Agreementの略称で、「経済連携協定」と訳されます。

FTA(Free Trade Agreement=自由貿易協定)が関税撤廃等の物やサービスの流通を自由に行えるようにする条約であるのに対して、EPAでは、物流だけではなく、人の移動や知的財産権の保護、投資、競争政策など様々な協力や幅広い分野での連携を行い両国間での親密な関係強化を目指す条約となっています。

ちなみに、このEPAを多国間で行うようにしたのがTPP(Trans-Pacific Partnership=環太平洋戦略的経済連携協定)です。

イメージとしては、FTA<EPA<TPPといった感じで、右に行くほどより日本が外国と自由に貿易等を行える環境が提供されることになります。

EPAの現状

現在の日本を取り巻くEPAの現状は以下となっています。

日本・シンガポール新時代経済連携協定:2002年11月30日発効
日本・メキシコ経済連携協定:2005年4月1日発効
日本・マレーシア経済連携協定:2006年7月13日発効
日本・チリ経済連携協定:2007年9月3日発効
日本・タイ経済連携協定:2007年11月1日発効
日本・インドネシア経済連携協定:2008年7月1日発効
日本・ブルネイ経済連携協定:2008年7月31日発効
日本・ASEAN包括的経済連携協定:2008年12月1日より順次発効
日本・フィリピン経済連携協定:2008年12月11日発効
日本・スイス経済連携協定:2009年9月1日発効
日本・ベトナム経済連携協定:2009年10月1日発効
日本・インド経済連携協定:2011年2月締結、発効待ち
日本・ペルー経済連携協定:2010年11月合意、締結待ち
(東アジアを中心に協定が結ばれているのはたまたまではなく、日本が戦略的に動いているからです。)

EPAは韓国が積極的などと報道されていますが、それも1面当たっている部分もありますが、現状においては、結構日本も他国と比べてそんなに出遅れているということでもありません。

また、TPPについては政治の混迷から日本は未だ参加できていない現状ですが、関西EPA研究会の講師を務めた経済産業省の方と名刺交換がてらお話をさせて頂いたところ、前回3月のシンガポールでのTPP交渉会合後には各国を個別に訪問して実務レベルのキャッチアップをしっかりと行っているということでした。

つまり、政治がゴーサインを出せば、いつでもTPPの交渉に乗り出せる準備をきちんと行っているということです。
ちなみに、次回TPP交渉会合は、6月でベトナムとなっていて、11月のハワイでのAPEC首脳会議である程度の合意を目指すようです。
日本が決断するのに残された時間はあまりありません(遅れれば遅れるほど日本にとって不利になるものと思われます)。

EPAのメリット

EPAの中小企業におけるメリットは、ずばり「関税が下がる」ことです。

経済産業省のHPより以下引用します。
通常、輸出入を行う際、各国が定める関税を支払う必要があります。

それらはWTOで決められた原則に基づき、ほぼ全ての国に対して共通の関税率が適用されます(一般にMFN(Most-Favored-Nation=最恵国)税率と呼んでいます)。

しかし、EPAでは、2国間でMFN税率より低い税率を定められることからEPAを結んだ国の間では、他国よりも低い税率で輸出入を行うことができます(一般的にEPA税率と呼んでいます)。

*WTOは153カ国(2009年8月現在)のもと、公平な貿易のルールを定める国際機関です。

基本的にこの関税は輸入者が払うことになりますので、直接的メリットは輸入者ですが、現地販売価格の値下げや輸入車へのインセンティブ付与による販売先の拡大など輸入者にも恩典があります。

とはいえ、中小企業にとってはまだまだ近くて遠いEPA

では、実際中小零細企業でこのEPAを活用しているかというと、多分ほとんど利用されていません。

中小零細企業にとってはまだまだ近くて遠いEPAという感じです。

原因は色々とあるでしょうが、そもそも海外との取引がまだまだ少ないということや、制度を知らなかった、又は知っていても手続きが面倒などではないかと思います(多額の輸出入取引がある等でない限り、実際ほとんどの中小零細企業にとって現状ではメリットを享受できません)。

でも今後、少子高齢化の需要縮小社会である日本においては、東アジアとは切っても切り離せない関係になると思います。

当然ですが、無理に中国やタイなどの東アジアに進出する必要はありません。中小零細企業こそニッチを見つけて、日本でうまく儲けられる口を確保しておければそれに越したことはありません。

しかし今後は、自身の会社ではなく、例えば、
・取引先からの依頼
・親会社からの要望
などで東アジアとかかわらざるを得ないということも十分想定されます。

ということで、今のうちから、「EPA」などについて情報収集をしておくということは、中小零細企業にとっても重要なことではないかと思い、今回のコラムとしました。

可能性としては、例えば一気にTPPなんかが決まって、外国との取引や交流が盛んになる、なんてことも想定されます(日本の将来を本気で政治家や世論が考えるようになれば可能性は十分あると思います)。

他にも、東アジアEPA構想というのが、机上の空論ではなく現実に動き出せば、日本にとっては明るい未来が開けることになるのかもしれません。

自分の子供世代が夢ある日本を思い描くためには、東アジアの中に生きる日本という位置付けは、必要かつ大切な事だと思います。
そこでは当面の間はEPAが重要な役割を果たします。

ということで最後に、ビデオでEPAやFTAの解説が見れるサイトをご紹介します。
少しデータが古い部分もありますが、概略を理解するにはわかりやすいです。

===========================
EPA/FTAを知っていますか?(外務省)
http://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/fta/koho/index.html
==========================

概略ではなくEPAやFTAの詳細を知りたい方はこちらをどうぞ。

============================
EPA/FTA(経済産業省)
http://www.meti.go.jp/policy/trade_policy/epa/index.html
============================

Ps.関西EPA研究会は来年3月までありますので、中小零細企業にとって有益ではないかと思われる情報があればまたコラム掲載致します。

この話が経営者の皆様のお役に立つことができれば幸いです。

メール通信№230


Copyright all rights reserved By マネーコンシェルジュ税理士法人

その他の最新税務関連ニュース

大阪税理士コラムのカテゴリー一覧

税務情報を「メール通信」「FAX通信」「冊子」でお届け。

中小企業の経営者及び総務経理担当者・相続関係者向けに、「知って得する」「知らないと損する」税務情報を、メルマガ、FAX、冊子の3種類の媒体でお届け。
配信日時などの詳細は下記をクリックしてご確認下さい。
会計事務所の方はご遠慮頂いております。

  • メール通信 ご登録&ご案内
  • FAX通信 ご登録&ご案内
  • 冊子媒体 ご登録&ご案内

今なら初回面談無料!
お気軽にお問い合せください。

0120-516-264受付時間 9:00~17:30(土日祝休)

メールでのお問い合せ

ページトップ