売上の3%~企業の売上高に占める研究費~
(注)執筆当時の法律に基づいて書いていますのでご利用は自己責任でお願いします。
もくじ
研究費の調査結果
総務省が昨年暮れに公表した「平成22年科学技術研究調査結果の概要」によると、平成21年度の日本の科学技術研究費の総額は約17兆円となっています。
研究費17兆円を更に研究主体別にみると、民間企業等が約12兆円で全体の約7割となっていて、他には大学等が約3.5兆円、非営利団体・公的機関が約1.7兆円となっています。
更には、これらを平成11年、平成16年、平成21年と定点観測したものが下記となります。
〔単位:億円〕
総額 | 民間企業等 | 大学等 | 非営利団体・公的機関 | |
平成11年 | 160,106 | 106,302 | 32,091 | 21,713 |
平成16年 | 169,376 | 118,673 | 32,740 | 17,963 |
平成21年 | 172,463 | 119,838 | 35,498 | 17,127 |
引用元:平成22年科学技術研究調査 総務省
若干調査方法が変わったところもありますが、重要なのは企業等の研究費は今から10年ほど前と今とで、増加しているということです。
売上の3%
さて、このコラムの題名の「売上の3%」、と聞いて何を指しているかおわかりになるでしょうか?
実はこれは、企業の売上高に占める研究費の割合です。
正確には、平成20年度3.11%、平成21年度3.31%となっています。
産業大分類別にみると、「学術研究、専門・技術サービス業」が27.47%と最も高く、次には「製造業」が4.09%、「農林水産業」が2.69%等となっています。
少し細かく見ていくと、「食料品製造業」1.03%、「医薬品製造業」11.66%、「情報通信業」の中の「情報サービス業」2.95%、「インターネット付随・その他の情報通信業」0.58%、「卸売業」0.22%等となっています。
全業種平均でいくとざっくり売上高の3%が研究費として使われているということでいいのでしょうが、上記で見たように業種によってその数字はまちまちで、更には卸売業のように利益に比して売上が大きい業種等は相対的に低い数字になっています。
詳しく見たい方は上記HPアドレスの「結果の概要」のP15をご覧ください。
年商3億円で900万円研究費
上記の数字からわかることは、この不況と言われる中でも、企業は当期の利益に直接貢献しないにも関わらず、売上高の約3%を将来のための研究費に使っているということです。
これを中小企業に当てはめると、以下のような数字になります。
年商3,000万円の会社では年間90万円の研究費(月7.5万円)
年商3億円の会社では年間900万円の研究費(月75万円)
年商30億円の会社では年間9,000万円の研究費(月750万円)
(卸売業のように原価が高く粗利が低い商売の場合は上記数字より低く見積もってください)
年商3億円で月75万円・年間900万円の研究費というと、だいぶ多いと思われるかもしれませんが、例えば20人従業員がいてその内の1人が将来の売上のための投資だとしたら、その人件費だけでも月50万円(賞与、社会保険料や厚生費、机パソコン代などすべてひっくるめて)×12月=年間600万円となります。
とはいえ、なかなかすぐに3%は厳しいという場合には、最初は1%ぐらいから考えてみてもいいでしょう。
この場合、年商3億円の会社で年間300万円、月にすると25万円の研究費となります。
中小企業では研究費を広く捉える
研究というと、ちょっと大げさに考える向きもありますが、中小企業の場合は「来期以後の売上のための種まき」ぐらいにかなり緩く捉えてもいいのかもしれません。
例えば、今日明日の売上直結のキツキツの動き(経費)ではなくて、「同業種だけど最近話題で色々やっているみたいやから、食事に誘って面識もっとこう又は今何を目指しているのか直接聞いておこう」といった場合の飲食費なんかも研究費に含まれると考えていいでしょう。
今後のために「○○を見に行っとこう=旅費代、入場料」や取引先から書類が来そうだから「○語をかじっとこう=スクール代、書籍代」も、立派な中小企業の「研究費」です。
もちろん、「新商品の開発」や「新サービスの開発」のための直接経費は素晴らしい研究費なのですが、何もそれにこだわる必要はなく、大事なのは、 目先だけではなくて、2,3年先の会社のために経営者が時間やお金を確保できているかどうかだと思います。
企業の目的はゴーイングコンサーン
私は勤務時代に所長から、「中小企業の経営目的は存続と発展」であると教えられました。
あれから15年ほどたって、今では確信として「中小企業の経営目的は存続と発展」と言えます。
その存続と発展のためには、単に黒字で満足していてはいけません。
「研究費を計上した上で」黒字=利益を出して、利益に対して税金4割引かれた後の6割部分を確実に会社に蓄積していき、毎年上記の研究費をねん出できるようにすることが大切です。
折しも今日・明日(8/15、8/16)は、8/13に迎え入れた祖先の霊が黄泉の国(よみのくに)にお戻りになる日でもあります。
京都では8/16には、五山の送り火(大文字の送り火)が行われます。
自分の親や祖父母世代から続く中小企業も多くありますが、この会社をこれからも永く続けていくために必要なことを、今少し立ち止まって考えてみてもいいのかもしれませんね。
この話が経営者の皆様のお役に立つことができれば幸いです。
メール通信№245
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