暴力団排除条例と中小企業

(注)執筆当時の法律に基づいて書いていますのでご利用は自己責任でお願いします。


暴力団排除条例、全国で施行

10月1日、市民生活や企業活動から暴力団を締め出すことを目的とした「暴力団排除条例」が東京都と沖縄県で施行されました。

これによって全都道府県で、暴力団排除条例が施行されたことになります。

新聞報道などによると、全国の暴力団構成員や準構成員数は、1997年以降、8万人台が維持されているようです。
有名芸能人の引退騒動を取り上げるまでもなく、近年、警察を中心としたいわゆる暴力団(反社会的勢力)に対する締め付けは、強力なものとなっています。

ここで中小企業経営者としてまず大事なことは、この世の中の潮流を体得することではないかと思います。
現在では、暴力団との安易な付き合いは、会社をつぶすことになります。

20年前、飲酒運転は日常茶飯事でした。(もちろんいけないことだと思いますが、ここでの主題ではありません)
しかし今飲酒運転を冗談含めて口にするものなら、非国民扱いとなります。

私が先日大阪で傍聴した裁判では、助手席に乗っていた方の飲酒運転ほう助罪を問うものでした。
世の中の潮流を表わしているともいえる「裁判所の判断」も、ここ数年、飲酒運転に対して特に厳罰の方向です。

「飲酒運転はダメ」、「アジアの時代」、「喫煙マナーの向上」や「メールの普及」なんかも、「暴力団排除」と同様に、経営者が踏み外してはいけない重要な世の中の潮流です。

冒頭の話に戻すと、公安委員会を中心とした1992年施行の「暴力団対策法」も規制強化の方向で来年改正が予定されていて、今後益々、暴力団に対する取り締まりは強化されていくものと思われます。

密接交際者と認定されると融資不可

暴力団排除条例のでは「暴力団の活動を助長し、暴力団関係者に利益を供与する行為」を禁じています。

そして、この暴力団関係者とは、「暴力団員、暴力団又は暴力団員と密接な関係を有する者」とされていて、「正規の構成員」、「準構成員」や「元構成員の一部」、更には非構成員であっても「暴力団と密接な関係にあると認定される会社や個人=密接交際者」も暴力団関係者とみなされるようです。

また、ゴルフや会食を繰り返すなどで上記の「密接交際者」と認定されると、会社名や氏名が公表されます。
もちろん公表されるだけではなく、例えば、暴力団関係者との取引を禁じている業界団体に加盟している銀行等から融資不可の扱いを受ける可能性が高いです。

他にも、取引先から、契約書に規定される「暴力団排除条項」に基づき契約を解除される可能性もあります。

密接交際者として公表されれば、その後の企業活動は通常行えないと考えたほうがいいでしょう。

契約書に「暴力団排除条項」を入れる

飲酒運転禁止がこの20年の間に一気に広がったのと同様に、この暴力団排除の動きも、ここ数年で一気に広がるでしょう。

中小企業経営者としては、この大きな動きに乗り遅れてはいけません。

当然のことも含めてあえて書くと、
・暴力団を恐れない
・暴力団に金を出さない
・暴力団を利用しない
・暴力団と(少しでもNGですよ!!)交際しない

更には今後は、自社がきちんとしていても巻き込まれることが想定されます。
また最近では、暴力団関係者とは一見して全くわからないことも多いようです。

そこで今後の契約書には、下記のサンプルを参考にして、(なるべく)「暴力団排除条項」を設けるようにしましょう。

これによって、もし相手方が暴力団関係者・反社会的勢力と後日判明したら、その時点で一方的に契約を破棄できます(詳細は弁護士に要確認)。

〔暴力団排除条項、サンプル〕
第○条 相手方が次の各号に該当する場合には、相手方に対して催告することなく、本契約を解除することができる。
(1)暴力団、暴力団員、暴力団関係者、暴力団関係団体その他反社会的勢力(以下「暴力団等」という)である場合
(2)自ら若しくは第三者を利用して他方当事者の業務を妨害した場合、又は妨害するおそれのある行為をした場合
(3)自ら又は第三者を利用して、他方当事者に対して、暴力的行為、詐術、脅迫的言辞を用いるなどした場合
(4)自ら若しくは第三者を利用して他方当事者の名誉、信用等を毀損し、又は毀損するおそれのある行為をした場合
(5)自ら又は第三者を利用して、自身やその関係者が暴力団等である旨を認知させる言動をした場合

引用元:DREAM GATE|会社経営に必要な法律 Vol.65 暴力団関係者との親密な交際で芸能界引退
http://knowhow.dreamgate.gr.jp/legal/id=2134

大家業に影響必至

この暴力団排除条例の中で、「不動産の譲渡等に関する措置」という項目があります。
大阪府のパンフレットから抜粋すると、下記のように記されています。

〔不動産の譲渡又は貸付け等をしようとする者の責務〕
1、契約の相手方に対し、暴力団事務所に利用されると知って不動産の譲渡又は貸付け(以下「譲渡等」)をしてはいけません。

2、事前に暴力団事務所に使用されないことを確認するよう努めてください。

3、契約書に「暴力団事務所に使用しないこと、暴力団事務所に使用されていることが判れば、事前通知なしで契約解除、又は買い戻しができる」旨の内容を記載するように努めてください。

4、暴力団事務所と判れば、速やかに解約解除等をするよう努めてください。


〔不動産の譲渡等の代理又は媒介をする者の措置〕
1、不動産の譲渡等をしようとする者に対し、上記1~4の助言等をしてください。

2、暴力団事務所に使用されることを知っていれば、代理又は媒介をしてはいけません。

3、代理又は媒介する者が違反をすれば、「説明又は資料の提出・勧告・公表」の措置を段階的にとります。

会社をつくると、漬物を買わされる

最後に余談ですが、会社を設立すると、わけのわからぬ輩(暴力団関係者、各種団体、単なる営業会社等)から電話があります。

これには気をつけてください。
この時に油断して、「意味不明の雑誌年間購読」や「壺や漬物の購入」等をしてしまうと、その後それを断ち切るのが大変です。

この時の最善の対応は、社長である自分に電話を取り次がない、ようにしてもらうことです。

会社設立時ですから他にスタッフがいないというケースも多いと思いますが、一人二役で社長としての自分は電話には出ない、というのがいいでしょう。

もし社長として電話に出たとしても、臨機応変に(やんわりと、時には頑固に)、「最終的には必ず断って」ください。

こちらの話も聞かずに念仏のように話し続け、脅しのようなものをぶつけてくることもしばしばですが、最終的には何が何でも断る、でいきましょう。

最後に重要なので再掲します。
・暴力団を恐れない
・暴力団に金を出さない
・暴力団を利用しない
・暴力団と(少しでもNGですよ!!)交際しない

この話が経営者の皆様のお役に立つことができれば幸いです。

メール通信№254


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