震災ボランティアに参加して

(注)執筆当時の法律に基づいて書いていますのでご利用は自己責任でお願いします。


田畑の再生

先々週末、宮城県で震災ボランティアに参加して、その後いくつかの被災地を見て回りました。

ボランティアでは、宮城県七ヶ浜町にて田畑の再生活動に従事しました。津波により田畑は多くのがれきと塩水にさらされましたので、三本ぐわで掘ってレーキで食器等のガレキを抽出し、燃えるもの燃えないものガラス類等に手作業で分類し、土のう袋に入れるの繰り返しでした。

関東以北の方の参加が多かったのですが、関西大学や京都から参加されている方もおられました。
その日は七ヶ浜町で250人ぐらいの方がボランティアに参加していました。

今も26万人が仮設やみなし仮設暮らし

東日本大震災の被害状況や現状をウィキペディア等を参考にまとめてみます。

〔被害状況〕
・2011年3月11日14時46分、宮城県牡鹿半島の東南東沖130kmの海底を震源として発生、マグニチュード9.0、最大震度7

・震災による死者・行方不明者は約1万9千人(9割以上が水死)、ピーク時の避難者は40万人以上、停電世帯は800万戸以上、断水世帯は180万戸以上

・全壊13万0,435戸、半壊26万2,917戸、全半焼279戸、床上浸水2万0,554戸、床下浸水1万5,583戸、一部破損71万7,678戸


〔現状〕
・応急仮設住宅戸数約53,000戸で、他に民間賃貸住宅の借上げなどみなし仮設が約62,000戸ありますので合計115,000戸

・仮設住宅団地数約900地区

・仮設及びみなし仮設で暮らす人数は、現在約26万人

・岩手県陸前高田市の例では、震災前に24,000人いた住民が震災や津波で約2,000人減少し、更に転居などで約2,000人減少し、現在既に20,000人を切っていると想定されます

・両親を亡くした子供約200人、片親を亡くした子供約1,300人

被災地に必要な事1

箇条書きで読みにくかったかもしれませんが、特に現在の被災地の状況(現状)を、少しイメージしながら再度読んでいただけたらと思います。
一部には震災バブルという言葉もありますが、ダイレクトに被災地という場所に行くと、ガレキの撤去どころかいまだ廃墟の取り壊しすら終わっていない地域があります。

更には、その近くで「足音1つ筒抜け」の仮設暮らしを「1年以上」続けている方が「多数」います。
子供がいる家庭は子供も親も心理的ストレスが頂点に達しているのではないかと思います。

また、その仮設から学校に通う子供は、自分の持ち物もその一部である廃墟やガレキをいまだに毎日毎日、目にする状況にいます。

本当に早くこのガレキの撤去を終えて、震災や津波の生々しさを子供たちの目の前から取り除いてあげるべきでしょう。
今被災地に必要な事はいくつもあると思いますが、まずあげたいのは、この廃墟の取り壊しそしてそのガレキの撤去です。

これは、特に子供の心理的ストレスを出来るだけ早くに解消するために、必要なことです。

被災地に必要な事2

被災地にはいくつか復興屋台村と呼ばれるような仮設の食事街が出来ています。
もちろんそこで働く人は仮設暮らしの被災者で、中には身内を亡くされた方もおられます。

私は気仙沼の復興屋台村で食事をしましたが、そこの店員さんがおっしゃっていたのは、「公営住宅のようなものを早く建ててほしい」ということでした。

仮設住宅では、特に音の問題が深刻なようです。
夜中であれば足音1つが隣近所に響くようです。
当然、においなどの音以外の問題も多々あるでしょう。

ここも少し具体的にイメージする努力が私たちには必要なのではないかと思いますが、今までは自分の家で隣とはかなり距離のあった方達が、急にある日突然、板一枚の壁で隣と接する仮設暮らしを「1年以上」も続けているのです。

被災地に必要な事の2つ目は、仮設暮らしから早く公営住宅のような住居に引越しさせてあげることです。

※ちなみにこの気仙沼の復興屋台村から徒歩10分のところに、大型船が大きく陸に乗り上げている場所があります。
現在もこの大型船は陸に乗り上げたままです。

被災地に必要な事3

多くの家が流されたのに奇跡的に松の木が一本だけ残り「奇跡の一本松」と呼ばれているのはご存知かと思います。

この松があるのが陸前高田市ですが、その海岸近くの元自分の家跡に自分で仮の簡易な家をつくって住んでいるおじいちゃんがいました。
正直遠くから見ると物乞いの家のようでしたが、よくみると自分の敷地内に小さな畑をつくっていたり、雨乞いの工夫がなされていたりしていました。

そのおじいちゃんは笑顔で、「わしは年金暮らしやからええけど、わしの子供含めて若い人には継続的な仕事が必要や、そうじゃなかったらここに住むことは出来ない」とおっしゃっていました。

私が訪れた被災地の多くで、「重機免許を取得して資格も仕事も!」の広告を見ました。
半壊以上の罹災証明書などがあれば受講料が全額補助されるそうです。

でも、これではダメなのです(非営利団体ががんばっている活動です、この活動自体は応援しています)。

もちろんこの重機免許を取得して将来永く勤められそうであればOKです。

大事なのは、将来安定的に継続した仕事があるかどうかです。
どこかの工場を誘致するとか、観光などのサービス産業を役所含めて一丸で盛り上げるなどが必要でしょう。

ここも少し自分のことに置き換えてイメージするとすぐにわかりますが、いくらバブルでも、いくら補助が出ても、いくら短期で儲かっても、親がいたり子供がいたりとすれば特にですが、「永続的な仕事」が不可欠です。

他にも色々と被災地に必要な事はあると思いますが、「子供への適切なケア、見守り」、「みなし仮設暮らしの人をも含めた被災者全員のメンタルケア」。

私が見た被災地の風景は悲しいぐらいに戦場のようでした。
しかし、ここも再度私たちにはイメージする努力が必要ですが、1年3ケ月前にはこの風景は今の数十倍悪化したもので、更にはそこやかしこに自分の身内かもしれない死体が転がっていたのです。

私は3日間ほど被災地にいただけですが、約2週間前に被災地に行って以来いまだ食事がままなりません。

メンタルケアは長期的そして細やかに十分な量で必要かと思います。

過疎化が加速

3日間被災地で暮らして、残念ながら、このままいくと被災地の未来は間違いなくこうなるな、と思いました。
今回の震災は、阪神淡路の時と比べると、被災地域や被災者数がとてつもなく大きく、ほぼすべての地域が元々過疎化していました。

また、東日本大震災以外の震災や水害などで、他の地域でも仮設暮らしなどをされている方がおられます。
国は不公平な政策はとれないでしょうし、またどこまで援助するかというのには財源の問題もあります。

冒頭で、陸前高田市の例をあげて、震災前に24,000人いた住民が今や20,000人を切っているようだと書きました。

まさに、このことが被災地全域で起こっていくと思います。
過疎化が加速するというのが、このままいくと被災地に必然的に起こる未来だと思います。

そして結果として、仙台市などの大都市に一極集中するのではないかと思います。

ではどうすればいいのか。

元々過疎化していたのですから全部の地域を元通りにとするのは私はやめたほうがいいのではないかと思います。
それよりも、エリアをいくつか決めて(この地域は工場、この地域は漁業など)そこに居住や仕事場を集約させていくべきだと思います。

ピンチをチャンスと捉えて、今までやりたくてもやれなかったことを思い切って国や自治体がグランドデザインを描いて実行して欲しいと思います。
もちろん、可能な部分は被災者である民間もどんどん積極的に議論に加わるべきですが、得てしてそうなるとなかなか決まらないことになりかねないので、ここは一気に国や自治体が思い切ったグランドデザインを描いて実行に移してもらうのが、長期的にはいいのではないかと思います。

被災地の景気

震災バブルといわれることがあります。

実際、国は5年で約19兆円の予算枠を計上し、更に追加をする予定である旨の新聞記事が7/4に出ていました。
ちなみに、宮城県、福島県、岩手県の3県のいわゆるGDPが約20兆円ですからそれとほぼ同額の税金投入となります。

先述の気仙沼の復興屋台村で一緒に飲んでいた方は、解体屋さんでしたが、「めちゃくちゃ儲かる」とはっきりとおっしゃっていました。
特に、通常の解体と違って廃材処理代が不要なため、それが丸っぽ利益になるそうです。

その方は工場長という肩書でしたが、来月誕生日で65歳になるそうです。
しかし、既に定年延長が決定されていて70歳まで現役だそうです。

また、実際解体をしていると今でも被災者の手足などが多数出てくるそうです。
その方は気仙沼に暮らして既に半年以上たっているそうですが、ここの周囲には既にフィリピンパブのような店が続々と出来だしているそうです。

一方、震災バブルの報道時によく映される町として、仙台市にある国分町という繁華街があります。

実際行ってみると、飲み屋などが所狭しと並んでいて非常に活況で、呼び込みの兄ちゃんと話をしても、とても陽気で笑顔で景気いいぞ感が満載でした。

しかし、1つ路地を入った昔ながらの地元密着のバーに行くと、全く様子が違いました。
2件行きましたが2件とも、景気は良くない、震災前より少し悪いぐらいかもとのことでした。

東京や大阪などの都心からチェーン店のような大型店がドーンと参入してきて、それらが地元密着の昔ながらの店を食いつぶしている様相もあるようです。

震災バブルを取り込む努力をするべきだという意見もあるかもしれませんが、繁華街が一概にすべて震災バブルというわけではなく、逆に都心からの新参者が客として事業者として入ってくることによって、今まで安定していた場所を荒らされて、結果的に常連さんが来にくくなり店の売上減という側面もあるようです。

被災地に行ってお金を落とせばそれが復興支援になっているんだというのは、総じて間違いではないと思いますが、このような側面も忘れてはいけないと思いました。

気付いたこと

以下その他気付いたことなどを箇条書きに記します。

・ガレキは恐怖

・地震で地盤が下がった影響は大きい(水たまり多数)

・ボランティアは自分探し、居場所探しという側面もある(ミッション系の学校で大学まで行ったが途中退学して、今は看護師系の大学入学を目指している受験生の例)

・被災地の方が「私たちも神戸の震災の時、1月もしない内に忘れてしまっていたからそんなものだよね」と言っていた

・場末のバーで感じたのは、復興と世代交代の同時進行

・おだづなよ津波がんばっぺ(なめるなよ津波がんばるぞ)

・女性が車の上で服を脱いで助けを求めていたが助けられなかった、その声が今も忘れられない

・大川小学校、絶句

・飲み屋ではうっかり店の人も被災者でもしかしたら親族で亡くなった方がいるのかもしれないということを忘れてしまう
→人間は本当に愚かな動物
→謙虚さを忘れるな

・仙台空港では3日間約2,000人が共同生活

・元気よくサッカーをしている横に大きなガレキの山が今も残っているのは子供の心に深く将来にわたり残ってしまうのではないか、早急に目の前から除くこと(ガレキの撤去)の必要性を感じる

・神社やお墓は高い所に建っていることが多いので流されていないことが多々あるが、寺はその多くが流された
→歴史の知恵?

・お墓は全般的にとても新しかった、墓石屋さんも多数有り(墓バブルの痕跡)

ボランティア参加マニュアル

ボランティアに参加するには、まず地元社会福祉協議会にてボランティア保険に加入して下さい。
私は大阪市北区で加入しましたが700円で1年間有効となっています。

次に、車で行かれる方は高速道路が無料になるため、「ボランティア車両の災害派遣等従事車両証明書」を取得しておきましょう。

手続き手順は参加するボランティア団体等によって多少違うでしょうし、事前にご確認を。
(テント宿泊が可能で時間が作れれば近畿からでも燃料代のみで参加可能?京都から参加されていた同世代の男性の方いわく車で約12-15時間)

そして持ち物ですが、これも参加するボランティアの内容によって違うでしょうが、私のように田畑の開墾のような作業の場合は、「ソール入り長靴、手袋及びそれを覆うゴム手袋、もちろん長袖長ズボン、帽子」は必須です。
ガレキは本当に危険です。

最後に、ボランティアに参加するにあたっては、当然に自分のことは自分でやる、人に迷惑をかけない、集団行動のルールを守る、笑顔などが必要です。
中には?と思う人もいましたので、書いておきます。

被災地に行くべきか

最後に、被災地に行くべきかどうかで悩んでいる方もいるのではないかと思いそのことについて記します。

・ボランティアっていっても自分には何もできないし迷惑かかるだけでは?

・ボランティアとはいえ、物見遊山(ものみゆさん)とみられるのではないの?

・ボランティアってそもそも偽善では?

・業界団体などで被災地視察ツアーがあるのだけど、これって被災地のひんしゅくを買うから参加すべきではない?

・被災地を見て回りたいのだけど、これってよくないよね?

被災地に一度でも行かれた方なら多分意見は一致するのではないかと思うのですが、「理由等気にせず、被災地に行くことが出来るならぜひ行くべき」です。

私は、土日月といましたが、週末も平日も、たいして人はいません。
被災地観光ツアーみたいな感じでバスツアーが来て写真バシバシとっていましたが、それでも全然人が少ない。

被災地で一番怖いのは、全く悪意なく完全に忘れてしまわれること、です。実際、既にその状態になりつつあります。

過疎地で起こった地震と津波被害としては、奥尻島を襲った北海道南西沖地震がありましたが、それは1993年のことです。
現在の奥尻島はどうなっているのか。

写真撮るの、全然OK(常識外はもちろんダメですが)
被災地観光、全然OK
被災地ドライブ、全然OK

ぜひ実際自分の目で見て、あぁここまだまだ大変な部分だよなとか感じたら、ぜひそのことを周りに話しましょう。
これは大変重要な復興支援になります。

細かいことなど気にせず、ぜひどんどん被災地に行ってあげてください。
可能なら、ぜひボランティアにも参加しましょう。

また、被災地に行くなら必ず交流を図りましょう。
ボランティア同士、(問題無い範囲で)被災者と、ご飯屋さんや飲み屋さんで、役所の方に、どんどん話しかけてください。

涙は本当に枯れるのだなと知った3日間でした。
おだづなよ、津波!

この話が経営者の皆様のお役に立つことができれば幸いです。

メール通信№292


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