伸びるのも潰れるのもワンマン

(注)執筆当時の法律に基づいて書いていますのでご利用は自己責任でお願いします。


八起会(やおきかい)

東京上野にある八起会(やおきかい)というのをご存知でしょうか。
代表者は野口誠一さん(84歳)という元倒産者の方です。

後学のために、先日事務所を訪問させて頂き、野口さんとその奥様と1時間半ほど色々とお話を聞かせて頂きました。

多数の書籍があり、5年ほど前に村上龍の「カンブリア宮殿」でも特集されましたので、聞いたことあるという方もおられるでしょう。

八起会とは、簡単にいえば、倒産した経営者の集まりです。

【八起会】

https://yaokikai.com/index.html

なぜ会いに行ったのか?

中小企業経営において儲かるパターンというのは無限にあるのではないかと思いますが、逆に儲からないパターンというのは、私の実感ではある程度限定されるような気がします。

「成功に決まったパターンはないが、失敗には決まったパターンがある」というのが、様々な経営者と日々接してきた実感です。

つまり、学ぶべきは成功パターンではなく、失敗パターン。

これが、東京上野にある八起会の野口さんに会いに行った理由です。(非常に失礼な言い方かもしれませんが、ご高齢なのも知っていましたので、早くお会いしておかねばと思いました。このこともストレートにお話ししましたが、奥様とともに笑っておられました。)

中小企業経営者の顧問税理士であり参謀役でもある当社としては、ご存命の内に野口さんには会っておかねばと思いアポをとらせて頂いた次第です。

伸びるのも潰れるのもワンマン

色々とお話を聞かせて頂く中で、一番心に残ったのが、今回のタイトルの「伸びるのも潰れるのもワンマン」です。

私の周りには、ワンマン経営者が多いです。
(他意はありませんので悪しからず、〇〇社長怒らないでね。以下同様)
で、更に言えば、(継続を祈願しますが)「今は」儲かっている経営者も多いです。
また、急成長している会社も、結構あります。

会社を大きく成長させる人に、ワンマンな方が多い。
しかし、物事は何でも両面有ります。

つまり、会社を大きく成長させるパワーをもった経営者は、同時に、会社を大きく潰すパワーも兼ね備えているケースがあるということだと思います。

野口さん自身が、「25歳で玩具メーカー設立、従業員5名・月商150万円でスタート、わずか5年で従業員100人・年商12億円に急成長、しかしその後ドルショックと放漫経営がたたり昭和52年に倒産」されています。

経営者の方にお伝えしたいのは、「会社を大きく伸ばすためにワンマンが必要な部分もあるでしょうが、会社を潰す経営者の特徴の1つとしてワンマンが挙げられる」ということを知っておいてほしい、ということです。

ここで必要なのは、自問自答であり、更にいえば、自問他答となる環境創りをしておくことではないかと思います。

ここにこそ、顧問税理士をお使いください。

夜逃げはするな!

野口さんご夫妻との会話の中で、「今資金繰りに窮している経営者」や「今はうまくいっているがいずれ大変な時が必ず来ると考える真っ当な経営者」向けに、いくつか教わったことを箇条書きで記します。

□倒産は、経営の失敗であって、人生の失敗ではない
→自殺なんて考える必要無し。心が弱い時は友人やそれこそ顧問税理士等と少し会話をしてみてください。1人で考え過ぎるのはよくないことが多い。

□倒産すると、幸せになる人と不幸になる人に分かれる
→倒産して幸せになるとは意外に思うかもしれませんが、それまでの大変な資金繰りや銀行交渉などから解放されます。ここで、素直に謝るべきところにはきちんと謝罪を行い、自分自身改めるべきところはプライベートな部分も含めてきちんと改めることができれば、倒産前以上に幸せになれることも。
倒産という貴重で過酷な体験をしたにもかかわらず、そこから学ぶことをせず、不幸になってしまうような事だけは絶対に避けましょう。

□夜逃げはするな
→人生何でも逃げると弱る。倒産の時など今まで以上に、逃げる姿勢はご法度。住所不定になれば、健康保険、子供の学校、運転免許の更新など難しくなり、自分だけではなく家族全員を社会から葬ることになってしまう。繰り返しになりますが、夜逃げはしないと心に誓う。

□同じ屋号、同じ業種、同じ場所で再起できるぐらいに・・・
→これが出来るぐらいに倒産処理を真面目に粛粛と謙虚に行うべき。もちろん、再起をどういった形で行うかは自由。

□倒産経営者でもある野口さん自身、84歳という年齢で、奥様とともにお仕事をされています
→倒産した当時、大きな複数自宅から狭い賃貸アパートに子供と共に引越しされて、「お父さん、家族の顔がすぐ見られるからこっちのほうがいいわよ」と奥様から。会社を倒産させても、家族倒産が避けられれば幸せな人生を送れる可能性は高まります。

□縮小することが最も難しい
→売上拡大(新規取引先獲得、海外進出、出店、IPO等)は実はそれほど難しいことではない。難しいのは、会社の守り。例えば、経理などの管理面を強化するとか。しかし、経営で最も難しいのは攻めでも守りでもなく、「事業を縮小する勇気」。

倒産会社社長3つの共通項

八起会での発言だそうですが、倒産会社の社長には3つの共通項があると。

1.職人タイプ
2.情に厚い(お人好し)
3.計数に弱い

3以外は悪い事ではないかと思いますが、該当する方は、例えば、職人タイプなのであれば、「情には過度に流されないようにしよう」とか、「計数に強くなろう」等と対応されるのがいいのではないかと思います。

野口さんが私に、「(野口さんは冒頭HPにあるように無料の倒産電話相談を20年以上されています)私自身調子の良い事を今言っていますが、実際には100人に1人でも救えればいいほうですよ、中には自殺直前という人もいて…」と言われたとき、奥様がすかさず、「そんなことありませんよ。もっとたくさん救っていると思いますよ。ここに電話してきただけで、実は救われたという人がたくさんいると思う」とおっしゃっていたのが印象的でした。

上野にある八起会の事務所の隣には下谷(したや)神社があるのですが、訪問前にお参りすると、正面に「家内安全」と書かれていました。

この話が経営者・資産家の皆様のお役に立つことができれば幸いです。

メール通信№394


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