知っておきたいスモールM&A進行中に結ぶ契約書の目的や記載例

(注)執筆当時の法律に基づいて書いていますのでご利用は自己責任でお願いします。


スモールM&A進行中、3回契約書を結ぶことが多い

スモールM&Aでは、企業規模や状況等によって変わってきますが、下記のように進行されることが多いです。

1.実名開示依頼・実名開示
企業概要書(ノンネームシート)で興味を持った譲受希望企業が、譲渡企業に実名開示依頼 → 譲渡企業が了承 → 【秘密保持契約書】を交わす →実名開示

2.トップ面談
社風や事業について質疑応答

3.基本合意
【基本合意書】を交わし、独占交渉へ

4.財務調査(買収監査)
簿外債務や過去トラブル等が無いかを確認

5.最終契約・引き渡し
【譲渡契約書】を交わし、成約となる

上記のような一般的な進行では、【】に囲われている目的が異なった契約書を3回交わすタイミングがあります。

今回は秘密保持契約書、基本合意書、譲渡契約書にフォーカスして概要をお伝えしたいと思います。

秘密保持契約書の目的

M&Aでは多くの場合、譲渡企業はインターネットのマッチングサイトなど様々な方法で、自社の事業引継ぎを検討してくれる譲受希望企業を広く募集しています。

上記の場合、掲載している情報は企業名が特定されないように幅を持たせた事業説明や地域などの情報で企業概要書を作成しています。
(例:大阪府大阪市北区 → 大阪府 や 関西地域 など)

その為、興味をもった譲渡希望企業が詳細な情報を確認したい際に、開示された情報の秘密厳守を約束する【秘密保持契約書】を締結した上で、会社情報等の開示をうけます。

※この時点で譲渡企業は、数社と同時に情報交換や質問を重ねて、お互いの条件確認や疑問解消などを行っています。

基本合意書の目的

上記を経て、譲渡企業・譲受希望企業が互いに譲渡契約を結びたいと判断した場合に、【基本合意書】という契約書を締結します。

基本合意書の締結後は、譲渡企業は契約書を結んだ譲受希望企業1社以外とは交渉が出来なくなります。

主な基本合意書を結ぶ目的は下記となります。

・独占交渉権の付与とその期限の設定
⇒期限は1~2か月の間で設定されることが多い。
・企業調査(デューデリジェンス)の実施権限と、それに対する譲渡企業の協力
・両者が口頭にて基本的に合意した内容の確認
⇒譲渡対象物、譲渡価額、実施時期など。
・譲渡企業の善良なる管理者としての注意義務

基本合意書は譲渡契約が確定したことを表すものではなく、また、成約させなければならないという法的義務はない、とするのが一般的ですので、ご注意下さい。

譲渡契約書の記載項目一例

基本合意書の締結後、企業調査を経て、最終的な契約の【譲渡契約書】を締結します。

譲渡契約書は最終契約書とも呼ばれ、当事者の権利義務を規定する重要なものです。基本合意書に掲載されていて、互いに合意した事項はもちろん、企業調査時に新たに合意した内容なども漏れなく記載をします。

契約手法(株式譲渡や事業譲渡など)については今回割愛させて頂きますが、基本的には共通して下記が記載されることが多いです。

・譲渡対象、譲渡時期、引渡書類・印鑑などの詳細明示
⇒所有株式数など譲渡対象となるものが何で、いつ譲渡するか
・譲渡価額、支払時期・方法
⇒代金がいくらで、いつどのような方法で支払うか
・経営者・役職員の処遇
⇒譲渡企業の経営者による引継ぎ期間や、従業員の雇用継続の努力義務等を設けてあるか
・表明保証条項
⇒譲渡企業の条項が厚くなる傾向があり、財産状況を正しく表示しているか、隠れ負債がないか、現在係争中・提起予定の訴訟などがないか、事業継続にあたり重大な契約の解除がないか、など記載されることが多い。
・クロージングの前提条件
⇒クロージングまでに何を行う必要があるか
・競業避止義務
⇒譲渡後に競合する事業を行うことがどの程度禁止されているか
・契約の解除事由
⇒どのような場合に契約を解除できるか
・損害の賠償・補填
・秘密保持 など

経済産業省のホームページに、それぞれの契約書サンプルが掲載されていますので、ご参考に是非ご覧下さいませ。

◇出典:中小M&Aガイドライン参考資料(40ページ以降)
https://www.chusho.meti.go.jp/zaimu/shoukei/download/m_and_a_guideline_s01.pdf#page=40

この話が経営者・資産家の皆様のお役に立つことができれば幸いです。

メール通信№868


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