役員退職金はどこまで出せるか?

(注)執筆当時の法律に基づいて書いていますのでご利用は自己責任でお願いします。


退職所得にはトリプル優遇策

中小企業において役員が退職する際には、もちろん役員退職金の支給が可能ですが、この役員退職金は払う側から考えても、受け取る役員側から考えても、税務上非常に優遇されています。

まず支払う側では、役員退職金の金額は”不相当に高額な金額”でなければ、経費として計上することができます。通常、役員退職金は高額になることが多いですから、かなりの節税効果が期待できます。

受け取る役員側では退職所得として課税されるのですが、退職所得は以下の3つの点で優遇されています。

1つ目は、退職所得控除です。

退職所得はもらった退職金の金額に対してそのまま課税されるわけではありません。勤続年数に応じた退職所得控除額を控除することが認められています。そのため、退職金が退職所得控除額以下であれば、所得税・住民税は課税されません。

2つ目は、1/2課税です。

退職金から退職所得控除額を控除した残額がある場合には、その残額に対して課税されるのではなく、そこからさらに1/2した金額に対して課税される仕組みになっています。

3つ目は、分離課税です。

退職所得は課税される際、他の所得とは合算しません。退職所得のみで税率計算を行います。所得税は累進課税ですから、金額が大きくなればなるほど税率は高くなります。そのため、退職所得が分離課税になっているのは、納税者にとって非常に有利なことなのです。

役員退職金の適正額はどうやって計算するのか

このように非常に優遇されている退職所得ですが、では役員退職金の金額はどうやって決めればよいのでしょうか。

残念ながら、税法上には具体的な規定がありません。
あくまで”不相当に高額な金額”はダメ、となっているだけです。

では実務上はどうしているかというと、以下のような算式で計算するのが一般的です。

●退職役員の最終報酬月額×勤続年数×功績倍率

この算式は税法上で認められているものではありませんが、過去、役員退職金を巡る裁判などでは、適正金額を算定するための根拠として実際に利用されています。

最終報酬月額と勤続年数は客観的に決まりますが、問題は功績倍率です。
一般的には、社長で約3倍までの功績倍率が妥当と言われています。

例えば、最終報酬月額が100万円、勤続年数が20年、功績倍率3倍とすると、役員退職金の適正額は6,000万円となります。

税務署を納得させるためには

ではこの場合、6,000万円を超えると必ず税務署に否認されるかというと、それはわかりません。何度も繰り返しになりますが、税務上はあくまで”不相当に高額”かどうか、という基準しかなく、上記の算式は便宜上のものだからです。

何か納税者側で根拠となる資料を準備することができれば、多少高額であっても税務署に納得してもらうことができるかもしれません。

例えば、何らかの理由で退職年度のみ役員報酬を大幅に減らしていた場合、上記の算式で役員退職金を計算すると、最終報酬月額がそれまでより下がっているため、計算上の適正額はその分少なくなってしまいます。このような場合には、最終年度が特殊であったことを合理的に説明できれば、役員報酬の過去5年平均などを取ることが認められるかもしれません。

功績倍率については少し難しいですが、もし同業種で同規模の法人の平均功績倍率のデータなどを手に入れることができれば、強力な根拠資料となります。

しかし、役員退職金を支給するためには、金額の決定以外にも必要なことがたくさんあります。支給するための資金準備、退職した後の会社経営、後継者、相続対策などなど。役員退職金というのは、あくまでそれらの事業承継の中の1項目ですので、金額もその一連の流れの中で考えるべきものです。税務上の問題だけではない、ということを最後に付け加えておきます。

このお話が少しでも経営者の皆様のお役に立つことができれば幸いです。

メール通信№147


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