個人と法人の税率の”トリック”

(注)執筆当時の法律に基づいて書いていますのでご利用は自己責任でお願いします。


個人と法人、どちらが税率が高いか

法人で稼いだ利益は、大きく「役員報酬」「税金」「内部留保」の3つに分配されます。「役員報酬」の取り方によって、「税金」の金額が変わり、「内部留保」の金額が変わります。

また、「役員報酬」自体にも「税金」がかかります。オーナー企業の場合、法人の税金であっても、個人の税金であっても、結局トータルでどれだけ払っているか、という考え方になります。
法人と個人の税率を考えながら、利益配分を考えていかなければなりません。

法人の実効税率は約40%とよく言われますが、最近の改正で下がってきています。

法人で1,000万円の利益に対して、かかってくる税金はざっと300万円です。(資本金1,000万円、従業員50人以下、大阪市本店の場合)単純計算で、税率は約30%になります。

これが、2,000万円になると税率は約36%、3,000万円で約38%になります。(計算はあくまで概算です、以下同様)

一方、年収1,000万円の役員報酬を取ると、かかってくる税金はざっと130万円です。(40歳以上、所得控除は社会保険料+100万円、住民税の所得控除も同額と仮定)額面に対する税率を単純計算すると、約13%になります。

年収2,000万円なら約25%、年収3,000万円で約32%になります。

利益2,000万円の分配で変わる税金

例えば、役員報酬支払前で2,000万円の利益を出している法人があるとします。
このまま税金を払えば、2,000万円×約36%=約720万円の税金です。

そこで、役員報酬を2,000万円支払って、法人の利益を0にするとします。
すると、年収2,000万円の役員報酬にかかる税金は、2,000万円×約25%=約500万円です。

役員報酬を支払わない場合に比べて、約720万円-約500万円=約220万円の節税になります。
法人と個人の税率差を考えると、個人で税金を支払う方が少なくなる、というわけです。

では、役員報酬を1,000万円支払って、法人に1,000万円の利益を残すとします。この場合、税金はどうなるでしょうか。

年収1,000万円の役員報酬に対する税金は、約130万円です。法人の1,000万円の利益に対する税金は、約300万円です。約130万円+約300万円=合計約430万円の税金になります。
すると、役員報酬2,000万円、法人利益0の場合より、約500万円-約430万円=約70万円税金が少なくなる計算になります。

法人より個人の税率の方が低いはずなのに、なぜこういうことになるのでしょうか?

理由は、所得税の累進課税

確かに、年収1,000万円の役員報酬に対する税率は、上記の条件で概算計算すると、約13%、年収2,000万円の場合は約25%になります。

それだけ見ると、法人の税率よりも”低く”見えます。

でも実際には、年収1,000万円で約130万円、年収2,000万円で約500万円の税金ですから、年収1,000万円を2,000万円に増やした時の増加額1,000万円に対する税金は、約500万円-約130万円=約370万円ということになります。

その部分の税率は、約370万円÷1,000万円=約37%です。

ということは、法人の利益1,000万円に対する税率約30%より高くなっていることになります。

その結果、役員報酬を1,000万円減らして、法人の利益を1,000万円増やす方が、トータルとしての税金は少なくなるわけです。

原因は、所得税が累進課税になっているためです。所得が増えるほど、税率が高くなる仕組みです。そのため、同じ1,000万円であっても、所得帯が高いほど高い税率がかかっています。

こういった仕組みをざっくりとわかっておくと、役員報酬を決める際に役立ちます。

この話が経営者・資産家の皆様のお役に立つことができれば幸いです。

メール通信№347


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