インボイス制度、結局何をやればいいのか教えます

(注)執筆当時の法律に基づいて書いていますのでご利用は自己責任でお願いします。


10分でわかる、インボイス制度ですべきこと

インボイス制度の開始までいよいよ残り2ヶ月を切りました。

そこで今回は、「インボイス制度について結局何をやればいいのか」を簡潔にまとめたいと思います。

今回の内容は、既に適格請求書発行事業者の登録が完了している課税事業者の方を対象にしています。

なお、紙面の都合上、細かい点はある程度簡略化していますので、ご了承下さい。

全ての相手にインボイスを渡す必要はない

インボイス制度について考えるとき、大きくは「売上、仕入」「相手が継続的取引先か、単発の取引先か」という2×2で整理するとわかりやすい、と個人的には思っています。

まず、自社の売上について考えてみます。

インボイス登録が完了している課税事業者の場合、インボイスの要件を満たした請求書や領収証を取引の相手先に渡す必要があります。

ただし、相手が事業者でない場合、一般の消費者などに対しての交付義務はありません。

「インボイスの要件」は、現行の請求書に「登録番号」を記載し、「消費税率」と「税率ごとに区分した消費税額等」を記載すればOKです。

システムを使っておられる方は、インボイス対応のバージョンアップがされるので大丈夫だと思います。

エクセルなどで作成している方は、フォーマットを変更しておいてください。

手書きのコクヨの領収証などでも、要件を満たしていればOKです。特に、大半の売上はBtoC、たまに単発で事業者相手の売上がある、ということであれば、登録番号のゴム判を作って、手書きで対応するやり方もありだと思います。

請求書がインボイスの要件を満たしていれば、納品書などのその他の書類は今まで通りで問題ありません。全ての書類について、インボイス対応をする必要はありません。

なお、インボイス制度では、税込1万円以上の値引きや返品に対しても、インボイスの発行が必要となります。

あと細かい点ですが、請求書1枚につき、消費税の端数処理は1回だけ、という決まりがありますので、注意してください。

売上より支払の方が大変

次は、仕入やその他の経費の支払についてです。

この場合、取引の相手方から請求書や領収証をもらうことになりますが、10月以降はこれらの書類がインボイスの要件を満たしているかどうかで、経理処理が変わってきます。

簡易課税を選択されている方は、以下の話は無視してもらって大丈夫です。

例えば、税込11,000円の仕入をしたとします。

相手からインボイスの要件を満たした請求書をもらえれば、経理処理は今まで通りです。

仕入  10,000円
消費税  1,000円

相手が免税事業者でインボイスの登録をしておらず、請求書がインボイスの要件を満たしていない場合は、以下となります。

仕入  10,200円
消費税 800円

まず、継続的に取引している仕入先などが、適格請求書発行事業者の登録をしているかを確認します。

基本的には、年間売上が常時1,000万円を超えるようであれば、インボイスの登録をしているはずです。そうでなさそうなところについて、個別に確認していくといいでしょう。

国税庁に適格請求書発行事業者公表サイトがあり、こちらで検索することもできます。
◇国税庁|インボイス制度 適格請求書発行事業者公表サイト
https://www.invoice-kohyo.nta.go.jp/

相手がインボイスの登録をしていなければ、上記の経理処理の通り、こちらが消費税2%分損をすることになりますので、値引交渉などをするか、そのまま取引を継続するかの判断が必要になります。

全体に占めるこれらの取引が大きければ、影響も大きくなりますから、慎重な対応が必要です。

単発経費をどう管理するか?

また、単発で支払う経費などについても、インボイスをもらえるかどうかで、経理処理が変わる点は同じです。

10月以降は、同じタクシー代や食事代などの経費についても、領収証がインボイスの要件を満たしているかどうかで、経理処理が変わります。
(簡単に言えば、領収証に登録番号が載っているかどうか)

自社で記帳されている場合には、相手がインボイス事業者かどうかで、消費税コードを分けて入力する必要がありますので、以下のような工夫が必要になるでしょう。

・仕入一覧の事業者名の横に、相手がインボイス事業者かどうかの欄を追加する。
・経費の領収証は、インボイスか否かで別々に管理する。
など

なお、これらの話は、経費精算などにも影響しますので、従業員にも周知が必要です。

ただし、以下のような取引については、インボイスがなくても、帳簿に記載しておくだけで、これまで通りの処理が可能です。
(仕入10,000円消費税1,000円のパターン)

・税込3万円未満の公共交通機関、自動販売機、自動サービス機による取引
・従業員等に支給する通常必要と認められる出張旅費、宿泊費、日当及び通勤手当等に係る課税仕入れ

2期前の課税売上高が1億円以下または、前期の上半期の課税売上高が5,000万円以下の事業者の方については、税込1万円未満の支払は、2029(令和11)年9月30日までインボイス不要です。

支払が自動引落になっている家賃など、毎月請求書が届かない取引もあります。

こういった場合は、インボイスの要件を満たした契約書を新たに締結するかインボイスで追加された要件の部分だけを覚書で交わすなどしておけば、大丈夫です。

弊社に記帳を依頼されている場合は、取引相手からもらった請求書や領収証がインボイスの要件を満たしていない場合には、通帳コピーや出納帳の摘要欄に「免」とご記入をお願いします。

この話が経営者・資産家の皆様のお役に立つことができれば幸いです。

メール通信№859


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