養老保険使った節税対策にメス

(注)執筆当時の法律に基づいて書いていますのでご利用は自己責任でお願いします。


近年の税制改正における、租税回避スキーム封じ

最近、新聞で税金の話題が掲載される日が多くなりました。来年度の税制改正大綱が、今月中旬から下旬にかけて発表されるためです。

現時点での情報によると、今回の改正は多岐に渡って行われそうで、納税者への影響が大きいことが予想されます。その内容については、また詳細が分かり次第、このコラムでも詳しくお伝えしていく予定です。

ところで、近年の税制改正では、過度な節税対策や租税回避スキームの封じ込めが目立ちます。

不動産関係では、アパート建築にかかった消費税の還付を受けるために、自販機を使った消費税の還付スキームが横行し、それに対応するため、今年度の税制改正により、手当がなされました。
生命保険の分野では、過去に逓増定期保険の全額損金処理の取扱変更、今年度の税制改正では、年金受給権の評価方法が改正になっています。

さらに今回、来年度の税制改正の対象として検討されているのが、法人契約の養老保険を使った租税回避スキームです。

問題となった養老保険

通常、法人契約の養老保険は、役員や従業員を被保険者とし、死亡保険金の受取人をその遺族、満期保険金の受取人を法人とすることで、保険料の1/2が損金として認められます(従業員全員等、普遍的加入が条件)。これがオーソドックスな契約形態です。

従業員の退職金に向けた資金作りや節税のために、上記の形態で加入されている会社は比較的多く見られます。

ところが、今回改正の対象として問題になっている契約は、これとは少し異なります。
同じ法人契約の養老保険で役員を被保険者としているところまでは同じなのですが、死亡保険金の受取人を法人、満期保険金の受取人を役員とします。そして、保険料の1/2は損金計上し、残りの1/2は役員に対する貸付金として処理します。保険期間は3~5年という短期のものが多いようです。

この場合、1/2損金というところは、従来の養老保険と変わらないのですが、問題は満期になったときです。

控除できる支払保険料は、全額か半額か

このタイプの養老保険では、満期保険金を役員本人が受け取ることになります。満期保険金は一時所得として課税対象になりますので、役員本人が所得税を負担しなければなりません。

一時所得は、収入からかかった経費を控除し、そこから特別控除額50万円を控除した上でさらに1/2した金額が所得金額になります。
この場合、「収入=満期保険金」、「経費=支払った保険料」となるわけですが、保険料の半分は法人が負担しており、役員本人が負担した保険料ではありません。

ここで、支払保険料は全額が控除できるのか、それとも役員が(貸付金という形で)負担した半額だけだと見るのかが問題になります。全額控除が認められるのであれば、役員本人の所得税負担は、限りなく少なくなります。

ただ、この点は現行法上では明確にされていません。そのため、支払保険料の全額を控除して申告するケースがあったようです。

裁判は、納税者側の連勝

実際、そういった申告に対して、支払保険料の半額しか認めないとして、税務署側が更正した事案について、現在裁判が行われています。
裁判では、地裁、高裁ともに支払保険料の全額を控除した納税者側の主張を支持しており、現在、国側が最高裁に上告中です。

まだどうなるかはわかりませんが、この事例に限らず、生命保険を使った節税対策には改正リスクがつきものです。実際、がん保険の全損処理についても、現在当局が通達改正を検討中、という情報もあります。利用する側は、そのリスクを分かった上で対策を打つことが大事です。

この話が経営者の皆様のお役に立つことができれば幸いです。

メール通信№211


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