生命保険の出口対策~保険金収入への課税をどう回避するか

(注)執筆当時の法律に基づいて書いていますのでご利用は自己責任でお願いします。


生命保険チェックシートの中から、出口対策を解説

以前コラムで、生命保険チェックシートのご案内をさせて頂きましたところ、多数のご希望を頂きました。チェックシートの各項目は、行数の関係から簡潔にまとめていますので、見ただけでは内容が少しわかりにくいかもしれません。

そこで、今回はチェックシートの一部を取り上げて、具体的な内容を改めてご紹介していきたいと思います。

今回は、生命保険チェックシート<法人編>より、出口対策の項目を取り上げます。

生命保険は、入口より出口が大事

生命保険を使った節税は、あくまで税金の繰延べに過ぎません。将来的に解約した場合等に収入が計上されますので、結果的にはそのときに課税されることになります。そのため、事前に「出口対策」を準備しておくことが必須条件です。

最も多い「出口対策」は、役員退職金の支払いです。一般的には、「最終報酬月額×勤続年数×功績倍率」で計算した金額を基準として、支払うことができます。
この場合、実際に現場からも完全に手を引き、名実ともに退職する場合は問題ありませんが、いわゆる「みなし退職」を検討する場合には十分に注意が必要です。

税法の通達には「みなし退職」の例示として、分掌変更等の後におけるその役員の給与が激減(おおむね50%以上の減少)したこと、といった記載がありますが、税務当局の実際の運用はかなり厳しいものです。これを巡る裁判も多く見られます。
形式的なみなし退職では認められませんので、注意して下さい。

事業年度変更と新規加入

では、他に何か対策はないのか、ということですが、直前でも対処可能な対策としていくつかの方法が考えられます。

簡単にできるのは、事業年度変更です。
保険金や解約返戻金による収入(以下、保険金等収入)が発生する前に、いったん事業年度を区切って、その収入を来期に回してしまうというものです。

事業年度変更は登記も必要なく、定款変更と税務署への届出のみで行うことができます。
保険金等収入が比較的少なく、来期に役員報酬の増額や、その他の投資等で吸収できる場合には、有効な方法です。

また、保険金等収入が比較的少ない場合には、その収入を原資として、新たな節税保険に加入する方法もあります。この場合には、継続して保険料を支払っていかなければなりませんので、当期の保険金等収入を相殺することばかりを考え、保険料が大きくなりすぎないように、注意する必要があります。

一部解約と失効

保険金等収入の金額が大きい場合には、出口対策にもある程度の時間が必要になります。
その場合、時間稼ぎをする方法として、「一部解約」と「失効」があります。

解約返戻率のピークがある程度の期間にわたって続く場合には、一度に全額を解約せずに、何回かに分けて、部分的に解約していく方法が有効です。
すると、解約返戻金による収入が複数年にわたって分割計上されますので、単年度で全額解約するよりも対策が打ちやすくなります。

また、生命保険の契約は、保険料を支払わなかった場合には失効しますが、一般的には失効後3年以内であれば、その間の保険料を支払うことで、契約を元の状態に戻すことが可能です。

これを利用して、保険金等収入の発生前に契約をいったん失効させ、その間に対策を考えるという方法もあります。契約が失効してしまえば、当然保険金等収入も発生しませんので、契約が復活可能な3年の間(保険会社によって異なります)で対策を考えることができます。

他には、法人から個人に生命保険契約を売却することで損失が発生することを利用した対策もあります。ただし売却するには、それに至る合理的な理由が必要です。

時間があれば、年金支払特約の検討を

「出口」までまだ時間に余裕がある場合には、事前に年金支払特約を付けておくことが有効です。保険会社や商品によっては対応していない場合もありますが、この特約を付けておけば、保険金や満期返戻金等を年金形式で分割して受け取ることができます。収入が分割されれば、一度に多額の課税がされなくて済みます。

今回ご紹介した出口対策は、どれか1つがおすすめというわけではなく、これらを組み合わせることで有効な対策となります。

この話が経営者の皆様のお役に立つことができれば幸いです。

メール通信№274


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