暦年課税と相続時精算課税のメリット、デメリット

(注)執筆当時の法律に基づいて書いていますのでご利用は自己責任でお願いします。

相続・贈与

2012.12.03


贈与は年末までに実行すべし

今年も残すところ、あと1ヶ月となりました。この時期に考えるべきことの1つとして「贈与」があります。個人の贈与は、1~12月の暦年を単位としていますので、今年の贈与は12月末までに実行しておかなければなりません。

贈与税には、「暦年課税」と「相続時精算課税」という2つの計算方式がありますが、贈与の実行に当たっては、このどちらかを選択する必要があります。

「暦年課税」では、その年の1月1日から12月31日までの1年間に贈与によりもらった財産の価額を合計し、その合計額から基礎控除額110万円を差し引いた金額が課税価格となります。贈与税額は、課税価格に税率を乗じて計算しますが、税率は、課税価格が増えるに従って高くなる累進課税になっています。

「相続時精算課税」は原則、65歳以上の親(贈与者)から贈与者の推定相続人である20歳以上の子に対して、2,500万円まではいったん無税で贈与できる制度です(2,500万円を超えた場合は、その超えた金額に対して一律20%の課税)。

ただし、贈与者が亡くなったときには、その贈与がなかったものとして、贈与時の価格で相続財産に足し戻した上で相続税が計算されます。支払った贈与税がある場合には、相続税から控除されます。

暦年課税のメリットとデメリット

この2つの方式には、それぞれメリットとデメリットがあります。

まず、「暦年課税」のメリットは、やはり非課税枠が使えることです。毎年3人に110万円ずつの贈与をした場合、それを10年間継続すれば、合計で110万円×3人×10年=3,300万円の贈与が無税で実行できることになります。

この場合、同じ贈与なら孫への贈与がおすすめです。相続税の計算において、相続開始前3年以内の贈与は相続財産に足し戻して計算する、という規定がありますが、この規定の対象となるのは、相続等により財産を取得した方です。
通常、孫は相続人となりません(代襲相続を除く)から、遺贈で財産を取得することなどがなければ、この足し戻し規定の対象外になります。

また、孫に贈与することにより、相続を1回飛ばすことができますので、その点でも有利になります。

逆にデメリットとしては、財産が分散してしまうリスクがあること、低税率で財産を移すには時間がかかること、などが挙げられます。

相続時精算課税のメリットとデメリット

では、「相続時精算課税」はどうでしょうか。

「相続時精算課税」では、贈与財産が贈与時の価格で相続財産に足し戻されますので、贈与財産の価格の動向がポイントになります。贈与時から値上がりした財産については、相続時より低い価格で相続税が計算できるため、有利になります。逆に贈与時から値下がりした財産については、相続時より高い価格で相続税を計算しなければならないため、不利になります。

相続財産への足し戻しは、他の相続人等の相続税にも影響してきますので、価格動向の見極めができなければ、「相続時精算課税」の利用にはリスクがあります。

また、いったん「相続時精算課税」を選択すると、「暦年課税」には戻れません。「相続時精算課税」になると、その後の贈与は全て税務署に申告しますので、贈与の状況はもれなく税務署に把握されることになります。後から他の相続人等が贈与の状況について開示請求することもできますので、贈与の内容は他の相続人等に対してもオープンになります(暦年課税の場合は、相続開始前3年以内の贈与のみ開示対象)。

そのため、選択には慎重な判断が必要となる「相続時精算課税」ですが、メリットがある場合もあります。

例えば、収益物件を親から子へ相続時精算課税で贈与した場合には、贈与後の収入は全て子に帰属しますから、親の財産増加を抑制することができます。

また、相続財産が基礎控除以下の場合には、そもそも相続税がかかりませんから、相続財産への足し戻しなどの影響を考える必要がなく、純粋な無税贈与として利用することができます。

相続人間で争いが起きることが事前にある程度予想できる場合にも、相続時精算課税は有効です。親の目が黒いうちに財産分けをして、先に贈与しておくことで相続後の争いを回避できる可能性があります。

最終的には、これらのメリット・デメリットを考慮した上で、総合的に判断することになります。

この話が経営者の皆様のお役に立つことができれば幸いです。

メール通信№313


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