相続時に借金がいくらか不明な時

(注)執筆当時の法律に基づいて書いていますのでご利用は自己責任でお願いします。

相続・贈与

2016.09.20


お父さんが借金王なら答えは簡単

お父さんが亡くなって、生前に事業を行っていた又は投資活動を行っていた場合等では、借金や債務保証が残っていることがあります。

息子さんがお父さんの事業を手伝っていた場合等では、お父さんの借金や債務保証については、大体の見当がつくかもしれません。

その場合は、お父さんの残したプラスの財産と借金などのマイナスの財産を比較して、マイナスの財産が多ければ、コラム「『相続放棄』はすべての経営者必須の知識」でもお伝えした「相続放棄」を行えば、残された相続人に借金等が移転することはありません。

つまり、お父さんが明らかに借金王とわかっていれば、妻や子供たちは、「相続放棄」を選択すればいいので、結論としては簡単です。

遺産と借金どちらが多いか不明な時

悩むのは、相続時に、お父さんのプラスの財産とマイナスの財産のどちらが多いか不明なケースです。

本人がいない中で、亡くなった方の借金や債務保証を明確に割り出していく作業というのは、実際にやってみるととても大変です。
会社の借金は決算などもありますから、わかりやすいのですが、個人の借金はなかなか判明しにくいことが多いです。

負債調査のやり方は色々ありますが、個別に債権者らしき人に連絡する以外にも、個人信用情報機関(株式会社日本信用情報機構、全国銀行個人信用情報センター、株式会社シー・アイ・シー)に問い合わせてみることも大切です。

こんな時には「限定承認」

「亡くなられたお父さんのプラスの財産」と「借金や債務保証のマイナスの財産」のどちらが多いか不明な時は、「限定承認」という手続きを検討してみて下さい。

限定承認とは、「お父さんのプラスの財産の範囲内でのみマイナスの財産を承継する」という方法です。

つまり、お父さんが多額の借金をしていたとしても、お父さんから承継した財産の範囲内では返済義務は残りますが、それ以上、相続人の個人財産を拠出してまで返済する必要はない、ということです。

限定承認の注意点1「みなし譲渡」

限定承認は良い制度ではあるのですが、注意点としては、お父さんである被相続人に対して、財産を時価で相続人に渡したとして「みなし譲渡所得課税」がかかってしまうことです。

相続では時価譲渡という考え方はありませんから、上記のような譲渡益課税はないのですが、限定承認の場合では、「含み益を抱えた不動産や株式」がある場合には、それらに対して譲渡益課税されますので、ご注意ください。

ちなみに、この譲渡益課税は、お父さんの準確定申告を相続人が行うことによって、結果的に相続人がお父さんの財産の中から払うことになります。

この場合も、お父さんの債務に算入されますので、譲渡益に対する税金を相続人が個人負担する必要は原則ないのですが、通常の相続に比べて、その税金分だけ相続手取りが減りますので損をするということになります。

限定承認の注意点2「相続財産には手をつけるな!」

限定承認の手続きは、相続開始後、原則3ケ月以内に被相続人であるお父さんの住所地を管轄する家庭裁判所に対して、原則相続人全員で手続きをとる必要があります。

しかし、この3ケ月の期間内において、最大の注意点があります。
それは、この3ケ月以内に、相続財産について消費や売却等の処分行為をしてしまうと、限定承認をすることが出来なくなってしまうことです。

つまり、処分行為=相続を承認したものとみなす、となるのです。

この処分行為には、消費や売却以外にも、「債権の取り立て」や「株主権の実行としての代表取締役の変更」なども該当しますので注意してください。

ただし、通常の葬儀費用の支払い等は処分行為に当たらないとされています。
限定承認を検討されている方は、くれぐれも、「相続財産には手をつけない」ということを覚えておいて下さい。

後で、限定承認をしたいと思っても、出来なくなってしまいます。

この話が経営者・資産家の皆様のお役に立つことができれば幸いです。

メール通信№507


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