暦年贈与は本当になくなるのか?

(注)執筆当時の法律に基づいて書いていますのでご利用は自己責任でお願いします。

相続・贈与

2021.09.06


去年年末に示された”予言”

贈与税では、受贈者1人当たり、毎年110万円までは税金がかからないこととされています。これを暦年課税制度といいます。

ところが、去年の年末に公表された「令和3年度税制改正大綱」に、以下のような文言が挿入されました。

『わが国の贈与税は、相続税の累進回避を防止する観点から、高い税率が設定されており、生前贈与に対し抑制的に働いている面がある。一方で、現在の税率構造では、富裕層による財産の分割贈与を通じた負担回避を防止するには限界がある。

諸外国では、一定期間の贈与や相続を累積して課税すること等により、資産の移転のタイミング等にかかわらず、税負担が一定となり、同時に意図的な税負担の回避も防止されるような工夫が講じられている。

今後、こうした諸外国の制度を参考にしつつ、相続税と贈与税をより一体的に捉えて課税する観点から、現行の相続時精算課税制度と暦年課税制度のあり方を見直すなど、格差の固定化の防止等に留意しつつ、資産移転の時期の選択に中立的な税制の構築に向けて、本格的な検討を進める。(「 令和3年度税制改正大綱 」より抜粋』

上記の大綱の文言を読み解くと、「毎年110万円でたくさんの子供や孫に毎年贈与し続けて、贈与税を負担せず、大幅に相続税を節税するのはケシカラン」と当局は考えている、ということです。

この書き振りからして、近いうちに改正が行われるであろうことが想定されます。

現在の贈与税は、「暦年課税制度」ともう1つ、「相続時精算課税制度」という制度があります。

こちらは、原則として60歳以上の父母又は祖父母から、20歳以上の子又は孫に対し、いったん2,500万円まで無税で贈与できる制度です。「いったん」というのは、結局、相続税を計算するときには、その贈与はなかったものとして、贈与時の価額で相続財産に足し戻すからです。

国際標準は「相続税と贈与税の一体課税」であり、相続時精算課税の方が望ましいという方向性です。

今年の贈与はちょっと多めに?

具体的にどのように改正されるのかは、まだわかりませんが、2021年2月22日の週刊税務通信に、自民党税制調査会会長の甘利氏へのインタビューとして、下記のような記事が掲載されています。

『資産の移転には,相続時と贈与時という選択肢がありますが,最高税率はいずれも55%です。一方で,贈与時を選択した場合,相続時よりもはるかに手前の金額で最高税率に達してしまいますから,相続時を選択した方が有利なケースが多いことになります。資産というのは活用されて初めて生きますから,活用のタイミングが税制によって制約されるのは,日本全体でみれば,もったいないわけです。ですから,いつ,資産を移転しても納税負担は変わらない方向にもっていくべきだという議論が,ひとつ原点にあります。

基本的な考え方としては,税の公平性,そして,政策目的に沿っているかという観点に加え,資産をどのように効率よく回していくかという観点も含めて,総合的に勘案していくということになりますね。(「 2021年2月22日 週刊税務通信」より抜粋) 』

ということで、やはり「いつ、資産を移転しても納税負担は変わらない方向にもっていくべきだ」と発言されています。

今年は、秋に衆院選が行われる関係で、年末の税制改正に取れる時間は少なくなりますので、来年度改正に盛り込まれるかどうかははわかりませんが、いずれにしても、数年内には改正、もしくは改正の方向性が示される可能性が高いと思われます。

今年、暦年贈与をされる方は、それを念頭に金額などをご検討ください。

ちなみに、相続税率が20%以上の方の場合、暦年贈与であれば、年間310万円以下の贈与は贈与税率10%、年間510万円以下の贈与(20歳以上の者が直系尊属から贈与を受けた場合)は15%となりますので、贈与税の方が有利となります。

ただし、現行税制においても、相続等によって財産を取得した方が、相続開始前3年以内に取得した贈与財産は、相続財産に足し戻されますのでご留意ください。

この話が経営者・資産家の皆様のお役に立つことができれば幸いです。

メール通信№760


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