相続登記の義務化検討、来年にも実施か?

(注)執筆当時の法律に基づいて書いていますのでご利用は自己責任でお願いします。

相続・贈与

2019.12.02


所有者不明土地が増える原因

今、所有者のわからない土地が急増しています。

推計では、2016年時点で日本全国に410万ヘクタールの所有者不明土地が存在します。九州本島が約367万ヘクタールですので、それを上回る広さです。このままいけば、2040年には720万ヘクタールに達し、北海道に匹敵する大きさが所有者不明土地になると言われています。

原因は、現在の相続登記制度です。
相続が発生し、土地の所有者が変われば、名義変更の手続きをするのが原則です。ただ、現状では相続登記は義務ではありません。登記をしなくても、罰金もありません。

相続登記をするには、登録免許税や司法書士費用といった登記費用がかかりますので、それを避けるため、登記をしない人が多いのが実情です。

その状態が何世代にもわたって続くと、登記簿謄本を取得すると、土地の名義が明治生まれの方になったまま、ということが起こります。今、その名義を遡って全ての相続登記をしようとすると、その名義人の相続人全員の印鑑が必要になるため、膨大な作業になります。

相続登記時の登録免許税は、2021年3月まで免税

この状況を打開するため、2018年に「所有者不明土地の利用の円滑化等に関する特別措置法」が成立し、今年の6月1日に全面施行されました。

また、2018年度税制改正では、相続登記を促すために、相続による土地の所有権移転登記について、登録免許税の免税措置も設けられています。

個人が相続や遺贈により、土地の所有権を取得した場合において、その個人が相続登記をする前に死亡したときは、2018年4月1日から2021年3月31日までの間に行う相続登記については、登録免許税が免除されることになっています。

簡易登記を認める代わりに罰則も

さらに現在、法務大臣の諮問機関である法制審議会で、所有者不明土地対策の追加案が審議されていますが、そこで「相続登記の義務化」が検討されているようです。早ければ、年内にパブリックコメントを経て答申が出され、来年秋の臨時国会での成立を目指すようです。

法制審議会の改正案の柱は4つです。

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1.相続登記の義務化と簡素化
新制度では、相続登記を義務化する代わりに、自分が相続人の一人だと証明できれば、相続人全員が揃わなくても、簡易的に登記できるようにする。

2.登記しない場合の罰則を設ける
被相続人の死亡後、一定期間内に相続登記しない場合には、「10万円以下」「5万円以下」といった罰則を科す。

3.遺産分割協議の期限を設ける
遺産分割の協議可能期限を10年とし、相続開始から10年で協議や申立てがなければ、法定相続分に従って分割可能とする。

4.土地所有権の放棄を可能にする
所有を巡って争いが起こっておらず、管理も容易にできる」ことを条件に、所有権の放棄を可能とする(法人による放棄は不可)。
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改正案が成立した場合に大きく影響するのは、1と2です。

現状で既に相続登記ができていない場合について、どのような取扱いになるのかは、はっきりとわかりませんが、法案が成立すれば、来年一斉に相続登記をしなければならなくなるかもしれません。

なお、現時点では法案が成立するかは不明です。今後の動向にご注意下さい。

この話が経営者・資産家の皆様のお役に立つことができれば幸いです。

メール通信№669


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