天皇陛下に相続税はかかるの?
(注)執筆当時の法律に基づいて書いていますのでご利用は自己責任でお願いします。
もくじ
エリザベス女王は相続税免除
普段は、まじめな小難しい(?)内容が多いコラムですが、たまには趣向を変えて。
イギリスのエリザベス女王が9月8日に96歳で亡くなられました。実に在位70年7ヶ月、25歳で女王に即位されたそうですので、想像を絶します。
女王の死去から国葬までの約10日間については、様々なパターンを想定した極秘プロジェクトとして「ロンドン橋作戦(Operation LondonBridge)」というコードネームで、1960年代から準備が進められていたそうです。
当面は、女王関係の様々な報道がなされていましたが、その中に相続税に関するものもありました。
『英国の女王エリザベス2世が死去したことを受け、その「遺産」は王位とともに新国王チャールズ3世へ引き継がれた。宮殿などの不動産や絵画コレクションといった富が対象で、君主から君主へ継承される資産は相続税が免除される。
王室に帰属する不動産は多くの収入を生み出しており、その利益は宮廷の維持管理や公務にあてられている。(日本経済新聞9/17より引用)』
ということで、女王の相続税は免除されるようです。
報道によると、女王の個人純資産は推定約600億円だとか。
ただ、イギリス王室に関する財産については、女王の個人所有になっているもののほか、国に信託されているものなどがあります。
女王が亡くなられた場所であるスコットランドのバルモラル城などは個人所有ですが、バッキンガム宮殿などは国に信託され、政府が維持運営に必要な費用を負担しています。
また、「クラウン・エステート」という特殊法人が資産の管理・運営を行っており、クラウン・エステートの利益は国に渡され、その一定割合が助成金として王室に交付されるという仕組みです。
なお、女王は相続税だけでなく、所得税についても納税義務が免除されています。しかし、エリザベス女王は1993年以降、自発的に納税をされていたそうです。
では、天皇陛下の相続税は??
そこで気になるのは「じゃあ、日本の天皇陛下の相続税はどうなっているの?」
ちょっと調べてみました。
まず、相続税法第12条には、相続税の非課税財産が定められているのですが、その第一項にこうあります。
『皇室経済法第7条の規定により皇位とともに皇嗣が受けた物』
では、天皇陛下については相続税が非課税なのか、というと、少し違うようです。
ここで挙げられている「皇位とともに皇嗣が受けた物」というのは、いわゆる三種の神器(八咫鏡、八尺瓊勾玉、草薙剣)や皇位とともに伝わる由緒ある物、”御由緒物”を指し、天皇陛下が所有する全ての財産について非課税になる、という規定ではないようです。
実際に、昭和天皇が崩御されたときに、平成天皇は約4億2,800万円の相続税を納税されています。
納税額がちょっと少ないように感じるのは、恐らく、終戦後に皇室財産の多くが国有財産にされたためだと思われます。
また、昭和天皇の法定相続人は11人おられたそうですので、相続税の基礎控除だけでも、当時の税法で「4,000万円+800万円×11人=1億2,800万円」になります。
こういう話を聞くと、職業柄、
・天皇陛下の相続税申告書は、誰が作成するの?
(財務省?絶対間違えたらアカンやつ・・)
・添付書類の戸籍謄本、付けられないよね?
(天皇陛下には、戸籍も住民票もありません・・・)
・天皇陛下は申告書にハンコ押すの?
とか、色々気になることが出てきますが(笑)。
また、相続税には、「小規模宅地等の特例」といって、例えば、被相続人の自宅約100坪までは、要件を満たせば8割減になる特例があります。
じゃあ、皇居に小規模宅地等の特例は適用されるのか?と考えていると、皇居は既に国有財産になっているんだとか。
やっぱり三種の神器に贈与税?
実は、もう1つ気になることがあります。
昭和から平成は「相続」ですが、平成から令和は「贈与」です。
生前退位の場合には、相続税ではなく、贈与税の課税問題になります。
気になることはもう1つ。
相続税法には、第12条に相続税の非課税財産が規定されていますが、贈与税の非課税財産については、第21条の3に定められています。
ただ、そこには、12条に規定されていた皇室関係の非課税規定がありません。
ということは、生前退位のときには、贈与税が課税される?
三種の神器に贈与税?どうやって評価するの??
もちろん、そんなことはありません。
「天皇の退位等に関する皇室典範特例法」の中に、贈与税の非課税規定が設けられ、特例法により非課税という措置が取られたようです。
当たり前ですが、ちゃんと気付いた方がおられるのですね(笑)。
いろいろ勉強になりました。
この話が経営者・資産家の皆様のお役に立つことができれば幸いです。
メール通信№816
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