『全財産を孫に相続させる』遺言はあり?

(注)執筆当時の法律に基づいて書いていますのでご利用は自己責任でお願いします。

相続・贈与

2013.06.03


遺留分とは?

例えば、こんな遺言を書くとします。
「全財産を孫に相続させる」
この遺言は有効でしょうか?

配偶者や子供などの相続人がいる場合、この遺言通りであれば、相続人は1円も財産がもらえません。

財産がもらえなかった相続人は、自分の最低限の相続分を主張することができます。
この最低限の相続分のことを「遺留分」といい、遺留分の返還請求のことを、「遺留分の減殺請求」といいます。

「遺留分の減殺請求」があれば、孫は請求があった相続人に対して、遺留分に相当する財産を渡さなければいけません。

遺言書を書くとき、「遺留分」に配慮することは重要です。

遺留分の権利者と割合

「遺留分」は、相続人に認められている権利ですが、全ての相続人に認められているわけではありません。

被相続人の兄弟姉妹については、たとえ相続人であっても、「遺留分」はありません。
その他の相続人には「遺留分」があり、原則として法定相続分の1/2(直系尊属のみが相続人の場合は、法定相続分の1/3)となります。

例えば、相続人が配偶者と子供3人のケースでは、
配偶者 1/2×1/2=1/4
子供1人 1/2×1/3×1/2=1/12
となります。

遺留分の対象財産が1.2億円とすると、
配偶者 1.2億円×1/4=3,000万円
子供1人 1.2億円×1/12=1,000万円
が、それぞれの遺留分になります。

遺留分の計算は、相続税とは違う

「遺留分の対象財産が1.2億円」と簡単に書きましたが、実際の計算はいろいろと複雑です。

遺留分の算定基礎となる財産は、おおまかには、以下の算式で計算します。

(被相続人が相続開始の時において有した財産の価額)+(贈与した財産の価額)-債務の全額

注意しなければならないのは、上記の計算は、相続税の計算とは異なる、ということです。

例えば、生命保険金は相続税の課税対象(非課税限度額あり)ですが、遺留分の対象財産にはなりません。民法上の本来の相続財産ではないからです。

土地については、相続税を計算するときには、路線価を基に計算し、小規模宅地の評価減などの適用もありますが、遺留分を計算するときは、原則時価で評価することとなります。

また、過去の贈与が問題になるケースも多々あります。
「お前は、家を建てるときに援助してもらっただろ」
「あんただって、海外留学するのに出してもらったでしょ」
などなど。

遺留分を計算するときには、こういった贈与財産も原則含まれます。

遺留分を計算しない相続

このように、遺留分についてはいろいろと規定があるのですが、そもそも、遺留分を正しく計算することが、本来の目的ではないはずです。

相続人が、お互いに譲り合いの精神で、円満にハッピーに遺産分割すること、それが一番大事なことです。
冒頭の例は極端ですが、たとえ「全財産を孫に相続させる」遺言でも、相続人全員がそれに納得していれば、OKです。

遺留分をきっちり計算した遺言書でも、それでかえって相続人がギクシャクしてしまうかもしれません。

遺留分なんて計算せずに済むようにお膳立てしてあげること、それが親から子への最後のプレゼントです。

この話が経営者・資産家の皆様のお役に立つことができれば幸いです。

メール通信№338


Copyright all rights reserved By マネーコンシェルジュ税理士法人

その他の最新税務関連ニュース

大阪税理士コラムのカテゴリー一覧

税務情報を「メール通信」「FAX通信」「冊子」でお届け。

中小企業の経営者及び総務経理担当者・相続関係者向けに、「知って得する」「知らないと損する」税務情報を、メルマガ、FAX、冊子の3種類の媒体でお届け。
配信日時などの詳細は下記をクリックしてご確認下さい。
会計事務所の方はご遠慮頂いております。

  • メール通信 ご登録&ご案内
  • FAX通信 ご登録&ご案内
  • 冊子媒体 ご登録&ご案内

今なら初回面談無料!
お気軽にお問い合せください。

0120-516-264受付時間 9:00~17:30(土日祝休)

メールでのお問い合せ

ページトップ