遺言だけじゃない、生前に財産分割する方法

(注)執筆当時の法律に基づいて書いていますのでご利用は自己責任でお願いします。

相続・贈与

2016.01.12


遺言作成のハードル

相続人に財産を残す方法として、一般的に有名なのが「遺言」です。実際に遺言さえ書いておけば、こんなことにはならなかったのに・・・というケースは多くみられます。遺言は、実質的に遺産分割を生前に行うことができ、相続発生後のトラブルを回避するのにとても有効です。

ただし、遺言を作るのには、それなりのハードルがあります。
・自分で書くのは結構大変、しかも要件が厳しい
→自筆証書遺言は、1つでも形式不備があれば無効です。

・かといって、公証人に頼めば費用がかかる
→公正証書遺言は、財産の価額に応じて手数料がかかります。証人2人の立会も必要です。

もちろん、遺言を書いた方がいい、ということはわかるし、最低限の費用がかかる、それも頭ではわかっているが、なかなかその一歩を踏み出せない方がたくさんいらっしゃるわけです。

自分が死んだら贈与する、という方法

ところで、皆さんは「死因贈与」というのを聞いたことがありますか?

「贈与」という言葉通り、贈与の一種なのですが、これは生前に行う贈与ではなく、「自分が死んだら贈与するよ」、という契約です。一見、遺言で財産を渡すのと変わりないように思いますが、主に次の3点で異なります。

◇ 遺言は一方的な単独行為、死因贈与は双方の合意を要する契約行為
→遺言は相続人に知らせずに実行可能、死因贈与は必ず相手に内容が伝わる


遺言は、自分1人で書くことができます。相続人に内容を知らせなくてもOKです

死因贈与の場合は「契約」なので、必ず相手と内容について合意することになります。きちんと生前に合意する、というのが死因贈与の特徴です。

◇遺言は形式主義、死因贈与は実質主義
→遺言は厳格な形式要件あり、死因贈与は、どんな形でも契約可能

また、遺言は主に自筆証書遺言と公正証書遺言がありますが、どちらもいろいろな要件があります。いずれにしても、簡単にはできません。

一方、死因贈与は形式に要件はありません。ワープロ作成の契約OK、家庭裁判所の検認もなし、証人の立会も不要、口頭契約でも認められます。

さすがに、口頭での契約は、後々のことを考えるとないと思いますが、形式に縛られず、通常の契約ベースで認められるというのは、かなり利用する側にとっては使いやすく、利用のハードルが下がります。

◇遺言は相続発生後に登記、死因贈与は生前の仮登記可能
→死因贈与は、受贈者の権利保護のために所有権移転の仮登記が可能


また、死因贈与で不動産を贈与する場合には、「始期付所有権移転仮登記」という仮登記をすることができます。この場合、死因贈与契約書を公正証書で作成する必要がありますが、これも遺言にはない、死因贈与ならではの特徴です。

逆に、遺言と同じところは、主に以下のような点です。
・贈与税ではなく、相続税の対象になる
・遺留分を侵害した場合には、遺留分減殺請求の対象になる

死因贈与のデメリットは?

このように、あまり知られていない「死因贈与」ですが、実はいろいろと使い勝手がいい面があります。ただし、もちろん万能ではありません。デメリットとしては、以下のようなことがあります。

・使い勝手が良い分、契約の存在、効力などでトラブルが起きる可能性がある
簡単に契約できる、ということは、裏返せば、簡単に契約書を偽造できる、ということでもあります。つまり、様々なトラブルが起きやすい、ということです。契約に重みを持たせるため、最低限、自署、実印押印、印鑑証明書添付はしておきたいところです。

・取消、撤回したい場合に、トラブルになりやすい
遺言の場合、内容を相続人に知らせなくても作成できますので、遺言を書き換えたい場合でも、新しく遺言を書き直せばいいだけです。しかし、死因贈与の場合は、そうはいきません。心変わりした場合、取消撤回したい場合など、トラブルになる可能性があります。

・不動産取得税がかかる
遺言で不動産をもらった場合には、不動産取得税はかかりませんが、死因贈与の場合は不動産取得税がかかります。

まずは、メリット、デメリット合わせて、こういう方法があるんだ、ということを知っておいて下さい。ケースによっては、ぴったりはまることがあるかもしれません。一般的には、遺言作成前の第一歩や、遺言と組み合わせた利用を検討して頂ければと思います。

この話が経営者・資産家の皆様のお役に立つことができれば幸いです。

メール通信№471


Copyright all rights reserved By マネーコンシェルジュ税理士法人

その他の最新税務関連ニュース

大阪税理士コラムのカテゴリー一覧

税務情報を「メール通信」「FAX通信」「冊子」でお届け。

中小企業の経営者及び総務経理担当者・相続関係者向けに、「知って得する」「知らないと損する」税務情報を、メルマガ、FAX、冊子の3種類の媒体でお届け。
配信日時などの詳細は下記をクリックしてご確認下さい。
会計事務所の方はご遠慮頂いております。

  • メール通信 ご登録&ご案内
  • FAX通信 ご登録&ご案内
  • 冊子媒体 ご登録&ご案内

今なら初回面談無料!
お気軽にお問い合せください。

0120-516-264受付時間 9:00~17:30(土日祝休)

メールでのお問い合せ

ページトップ