相続税の増税を減税で返り討ち

(注)執筆当時の法律に基づいて書いていますのでご利用は自己責任でお願いします。

相続・贈与

2013.02.12


相続税の増税と減税

1月終わりに「平成25年度税制改正大綱」が発表されました。

今回の改正は大型で影響の大きいものとなっていますので、当事務所にもいくつかの報道機関から問い合わせなどが来ています。

その中でよく聞かれるのが、相続税関係の改正項目です。
新聞報道では、「相続税の基礎控除4割縮小」などが度々解説されていますが、実際には、相続税の減税措置も多数盛り込まれています。

そこで税制改正大綱から、相続税の増税関係と減税関係を両方取り上げたいと思います。

相続税の増税措置

1.相続税の基礎控除について、現行の「5,000万円+1,000万円×法定相続人数」を「3,000万円+600万円×法定相続人数」に引き下げる

2.課税所得2億円超(遺産全体でなく法定相続分による各相続人取得毎)の税率の一部引き上げ、合わせて最高税率も50%から55%へ

(注)これらの改正は、平成27年1月1日以後の相続について適用予定

特に、基礎控除が従来より4割下がることにより、例えば、妻と子供2人の相続人3人のケースで、「5,000万円+1,000万円×3人=8,000万円」から「3,000万円+600万円×3人=4,800万円」と大幅に課税最低ラインが下がります。

この場合、今後は自宅などで4,800万円超の相続財産を夫がお持ちの場合に、相続税が課税される可能性が出てくることになります。(小規模宅地特例などを使って税金が発生しない可能性もありますが)

減税措置アレコレ

あまり報道などはされませんが、実は税制改正大綱では、いくつかの減税措置も明記されています。
以下列挙します。

小規模宅地関係

小規模宅地等についての相続税の課税価格の計算の特例について、次の見直しを行う。

1.特定居住用宅地等に係る特例の適用対象面積を330平米(現行240平米)まで拡充する。
→小規模宅地特例が適用できると、自宅等の財産評価が8割減の2割評価に激減することになりますので、この特例をうまく使うことが節税対策では重要となります。
そして今回の改正では、この限度面積が240平米から330平米に拡大されるとなっているのです。


2.特例の対象として選択する宅地等の全てが特定事業用等宅地等及び特定居住用宅地等である場合には、それぞれの適用対象面積まで適用可能とする。
なお、貸付事業用宅地等を選択する場合における適用対象面積の計算については、現行どおり、調整を行うこととする。
→これによって、自宅330平米+事業用土地400平米=最大730平米の土地の評価が8割減の2割評価になります。


3.一棟の二世帯住宅で構造上区分のあるものについて、被相続人及びその親族が各独立部分に居住していた場合には、その親族が相続又は遺贈により取得したその敷地の用に供されていた宅地等のうち、被相続人及びその親族が居住していた部分に対応する部分を特例の対象とする。
→この改正により、原則、2世帯住宅であれば、構造上の区分があってもそれが上下であろうが左右であろうが、小規模宅地特例に該当することになりそうです。
これは、実務に即した隠れた大改正といえます。


4.老人ホームに入所したことにより被相続人の居住の用に供されなくなった家屋の敷地の用に供されていた宅地等は、次の要件が満たされる場合に限り、相続の開始の直前において被相続人の居住の用に供されていたものとして特例を適用する。
(1)被相続人に介護が必要なため入所したものであること。
(2)その家屋が貸付け等の用途に供されていないこと。
→従来老人ホームに入所すると、特別養護老人ホームでない限り、小規模宅地特例の適用が難しかったのですが、今後は上記の要件を満たすように配慮しておくと対象となる可能性が出てきます。
これも同様、実務に即した隠れた大改正といえます。

(注)上記1及び2の改正は平成27年1月1日以後の相続について、上記3及び4の改正は平成26年1月1日以後の相続について適用予定

未成年者控除及び障害者控除関係

次のとおり引き上げる。

1.未成年者控除
現行「20歳までの1年につき6万円」から「20歳までの1年につき10万円」に引き上げる。

2.障害者控除
現行「85歳までの1年につき6万円(特別障害者については12万円)」から「85歳までの1年につき10万円(特別障害者については20万円)」に引き上げる。

(注)上記の改正は、平成27年1月1日以後の相続について適用予定

贈与関係

1.20歳以上の者が直系尊属から贈与を受けた場合の軽減新贈与税率表を新設
2.相続時精算課税贈与の要件緩和
3.教育資金贈与の1,500万円非課税制度を新設
→3については、相続税の大型節税対策が可能となっていますので、次回詳しく解説する予定です。

(注)今回の内容は、正式な決定事項ではありません。今後の動向によって、内容が変更になる可能性がありますのでご注意下さい。

この話が経営者・資産家の皆様のお役に立つことができれば幸いです。

メール通信№322


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