高額な美術品等の減価償却で節税!?

(注)執筆当時の法律に基づいて書いていますのでご利用は自己責任でお願いします。


減価償却資産の範囲

過日、本来は減価償却できない世界的に有名な楽器を経費として計上する税務上の誤りを指摘されたことが報道されました。今回はこの件を例に、減価償却資産の範囲について確認していきます。

まず、なぜ減価償却資産に該当しないと否認されたかというと、減価償却資産からは、「時の経過により価値が減少しないもの」は除かれているからです。希少性の高い楽器は年数を経ても価値が下がらず、本来は減価償却が認められません。

減価償却資産とは、建物、構築物、機械及び装置、船舶、車両及び運搬具、工具、器具及び備品、鉱業権その他の資産で償却をすべきものとして政令で定めるものをいいます。

また、棚卸資産、有価証券及び繰延資産以外の資産(事業の用に供していないもの及び時の経過によりその価値の減少しないものを除く。)とされています。

時の経過によりその価値の減少しない資産とは

次にあげるものをいいます。

(1)古美術品、古文書、出土品、遺物等のように歴史的価値又は希少価値を有し、代替性のないもの
(2)(1)以外の美術品等で、取得価額が1点100万円以上であるもの(時の経過によりその価値が減少することが明らかなものを除く。)

ただし、取得価額が1点100万円以上であっても、「時の経過によりその価値が減少することが明らかなもの」として減価償却資産に該当するものとしては、例えば次の3つの事項をすべて満たす美術品等があげられます。

1.会館のロビーや葬祭場のホールのような不特定多数の者が利用する場所の装飾用や展示用(有料で公開するものを除く。)のもの
2.移設することが困難でその用途にのみ使用されることが明らかなもの
3.他の用途に転用すると仮定した場合にその設置状況や使用状況から見て美術品等としての市場価値が見込まれないもの

※上記に該当しない美術品等が「時の経過によりその価値が減少することが明らかなもの」に該当するかの判定は、実態を踏まえて判断することになります。

また、取得価額が1点100万円未満であるもの(時の経過によりその価値が減少しないことが明らかなものを除く。)は減価償却資産と取り扱います。

美術品等の減価償却

上記の減価償却資産に該当する美術品等の法定耐用年数は、それぞれの美術品等の構造や材質等に応じて、法令に掲げる区分に従って判定します。

例えば、その美術品等が「器具及び備品」の室内装飾品に該当する場合には、次のとおりとなります。
(1)室内装飾品のうち主として金属製のもの……… 15年
例:金属製の彫刻
(2)室内装飾品のうちその他のもの………………… 8年
例:絵画・陶磁器・彫刻(主として金属製のもの以外のもの)

また、美術品等が絵画である場合、額縁はその一部として取得価額に含まれるものと考えられます。

なお、購入した減価償却資産の取得価額は、その資産の購入の代価とその資産を事業の用に供するために直接要した費用の額の合計額となります。

この資産の購入の代価とは、引取運賃、荷役費、運送保険料、購入手数料、関税等その資産の購入のために要した費用をいいます。その資産を事業の用に供するために直接要した費用の額には、例えば、据付費等が該当しますので、これらの費用が美術品等の取得価額に含まれることになります。

美術品等の展示場所

減価償却資産に該当する美術品等が、例えば建物のエントランスや会議室、役員室に展示している場合には、通常、事業の用に供しているものと考えられます。

また、倉庫等に保管され現在展示を休止している美術品等であっても、その休止期間中必要な維持管理が行われており、いつでも展示可能な状態にあるものについて、事業の用に供していると考えられます。

【参照:「国税庁」】美術品等についての減価償却資産の判定に関するFAQ
https://www.nta.go.jp/law/joho-zeikaishaku/hojin/bijutsuhin_FAQ/index.htm

この話が経営者・資産家の皆様のお役に立つことができれば幸いです。

メール通信№657


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