グループ法人税制は中小企業も強制適用
(注)執筆当時の法律に基づいて書いていますのでご利用は自己責任でお願いします。
今回は、平成22年度税制改正における法人税の大目玉であるグループ法人税制についてお送りします。
もくじ
「グループ法人税制」とは?
平成22年度税制改正で「グループ法人税制」というものが導入されました。
新たな税制です。これまで、新聞等で「連結納税」という言葉を聞かれたことがあると思いますが、内容が違います。
連結納税とは、グループ全体を1つの会社とみなして、税金の計算をして納税する仕組みで、任意適用です。
一方のグループ法人税制の場合は、税金の計算も納税も単体法人で行いますが、グループ内での次の取引について今までとは違う取扱いを行います。
該当すれば強制適用です。
1.資産の譲渡
グループ内で簿価1,000万円以上の一定の資産を譲渡をした場合、譲渡損益を計上しない(正確には繰り延べる)
2.寄附金
グループ内における寄附金について、支出法人では損金不算入とし、受取法人では益金不算入とする
完全支配関係
グループ法人税制の対象は、100%グループ内の完全支配関係のある法人です。
この完全支配関係とは、
・一の者が法人の発行済株式等の全部を直接もしくは間接に保有する関係
・一の者との間に当事者間の完全支配の関係がある法人相互の関係
をいいます。
一の者は、個人の場合も法人も場合もあります。
なお、個人の場合には、個人の親族(6親等内の血族、配偶者及び3親等内の姻族、事実婚の関係にある者など)も含んで判定します。
資産譲渡損益の繰り延べ
完全支配関係のある法人であるA社が簿価2,000万円(時価1,500万円)の機械をB社に売却したとします。
〔従前の取扱い〕
A社で機械売却損500万円(2,000万円ー1,500万円)を計上する
〔新たな取扱い〕
A社で機械売却損500万円を計上しない
A社は、B社がグループ外の会社等にこの機械を売却したとき、繰り延べた機械売却損500万円を法人税申告書別表で減算する。(説明上、減価償却費は考慮しない)
寄附金
完全支配関係のある法人であるA社からB社へ寄附金1億円を支出したとします。
〔従前の取扱い〕
A社では寄附金限度額まで損金算入し、B社では受贈益1億円を益金算入とする。
〔新たな取扱い〕
A社では全額損金算入せず、B社でも全額益金算入しない。
つまり、課税関係は生じない。
また、重要なことですが、寄附金の取扱いについては、法人による完全支配関係のある法人間に限られています。個人が支配する法人間においては、従前通りの取扱いとなります。
このグループ法人税制は、今年10月1日以後の取引から適用となります。
この話が経営者の皆様のお役に立つことができれば幸いです。
メール通信№196
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