消費増税の中小企業への影響

(注)執筆当時の法律に基づいて書いていますのでご利用は自己責任でお願いします。


消費増税法案、衆議院通過

先日、6/26に社会保障と税の一体改革関連法案が衆議院を通過しました。この後、参議院で審議され、8月頃には可決される見通しとなりました。

法案が可決された場合、平成26年4月1日から消費税率は8%に、平成27年10月1日から消費税率は10%に増税されることになります。第一生命経済研究所の試算によると、消費税増税による家計の平均負担増は、以下のようになるそうです。
(それぞれ5%時との比較)

●年収300~350万円 
・8%時  年間52,628円の負担増(以下同じ)
・10%時  86,118円

●年収450~500万円
・8%時  66,583円
・10%時  108,953円

●年収700~750万円
・8%時  76,551円
・10%時  125,265円

●年収1,000~1,250万円
・8%時  115,590円
・10%時  189,147円

平成25年からは、所得税の復興増税なども始まり、個人への負担はますます増えていきます。

また、消費増税に合わせて、所得税の最高税率の引き上げや、相続税の基礎控除の引き下げなども行う予定でしたが、こちらについては、年末の平成25年度税制改正の議論に持ち越されることになりました。 

なお増税時には、低所得者対策として、「給付付き税額控除」と「複数税率」の両方を検討することとしています。

「給付付き税額控除」というのは、所得が少なく税額控除により税額がマイナスになる場合に、そのマイナスの金額を支給する仕組みです。基本的には、マイナンバー制度によって各個人の所得等を正確に把握できることが前提となります。


「複数税率」については、事業者がインボイス(適用税率や税額など法定されている記載事項が記載された書類)を発行することが前提となります。この場合、中小企業に大きな事務負担が生じます。また、免税事業者はインボイスを発行できない(つまり、免税事業者からの仕入は課税仕入にならない)ため、取引上不利になる、という問題もあります。

増税に備えて、考えておくべきこと

では、今後の増税を踏まえて、中小企業の実務に影響する項目を考えてみます。

駆け込み特需

前回の消費税増税時と同様に、増税前の駆け込み特需があることが予想されます。
特需をうまく取り込むと同時に、その反動による売上減少に備える必要があります。
3月決算や9月決算の場合には、決算直前に(特需による)思わぬ利益が上がり、多額の税金が発生するケースも考えられますので、注意が必要です。

非課税業種の消費税

消費税は原則、預り物ですので、売上と一緒に預った消費税から仕入等と一緒に支払った消費税を控除した残りを税務署に支払います(原則課税の場合)。
ただし、売上が消費税の非課税業種(医療・介護関係、居住用の不動産賃貸など)の場合には、売上と一緒に預かる消費税がありませんから、仕入等の消費税を控除することができません。結果、最終消費者として消費税を負担しなければなりませんので、増税分の負担が大きく利益に影響してきます。

価格転嫁

消費税の増税分を、完全に価格に転嫁できる場合は問題ありませんが、そうでない場合には、利益率が下がることになります。もちろん、親会社等からの不当な要求に対しては、必要な法律上の整備がなされる予定ですが、取引先との関係、売上の減少を抑えるため等で、多少の値引きを飲まざるを得ない場面もあるかもしれません。

納税、資金繰り

原則、消費税は預り物ですが、とはいえ、受け取ってしまったお金は、運転資金として、通常の資金繰りに組み込まれてしまいます。今後、10%に税率が上がった場合には、消費税の納税額も多額になります。スムーズに納税するためには、日頃からの資金管理がより一層重要になります。

免税点制度、簡易課税見直し

消費税には、いわゆる益税問題があります。税率が上がった場合、免税点制度や簡易課税にメスが入れられる可能性が高いですので、該当する中小企業は、今後の動向に要注意です。

この話が経営者の皆様のお役に立つことができれば幸いです。

メール通信№291


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