あの人が不動産投資をしている本当の理由

(注)執筆当時の法律に基づいて書いていますのでご利用は自己責任でお願いします。

相続・贈与

2015.05.07


「税金が払える現金」と「節税できる不動産」

不動産を使った個人の節税は、大きく2種類に分かれます。「ストック(資産)の節税」と「フロー(所得)の節税」です。

現金を持っていれば、相続税を払える代わりに、節税にはなりません。

現金で土地を買うと、その瞬間、相続税評価額は約80%に下がります。さらに、その土地を他人に貸すと、評価額は約30%にまで下がります。
建物なら、建てた瞬間に相続税評価額は約60%です。他人に貸せば、約40%まで下がります。

現金はなくなりますが、相続税は減らせる、これが、「ストックの節税」です。

減価償却で節税するカラクリ

もう1つ、不動産を使ってできるのが、「フロー(所得)の節税」です。

建物を購入した場合、その取得金額は多額になりますが、いっぺんに経費で落とすことはできません。耐用年数に応じて少しずつ経費にしていく、それが減価償却です。

減価償却費が大きければ、毎年の収支が黒字でも、申告ベースでの所得は赤字になる場合があります。赤字になれば、他の給与所得や事業所得と相殺することができます(土地取得のための借入利息部分を除く)。

もし、税率が最高税率であれば、赤字金額の55%の税金が還付されることになります。還付金額を左右するのが、減価償却費の大きさです。

減価償却費を大きくするためには、できるだけ短期間で、できるだけ多く償却する必要があります。

減価償却費を決めるのは、「償却方法」と「耐用年数」です。
償却方法には、定額法と定率法の2つの計算方法があります。

定額法は毎年一定額を償却していく方法、定率法は毎年簿価の一定率を償却していく方法です。
定額法の場合、最初の年度から最後の年度まで年間の償却額は変わりませんが、定率法の場合は、初年度が最も償却額が大きく、その後だんだん償却額は減っていきます。最初の数年で大きく償却できるのが特徴です。

そのため、できるだけ定率法を使うのがセオリーとなります。

建物は定額法しか使えませんが、それ以外の建物付属設備等は定率法を使うことができます(ただし、事前の届出が必要)ので、物件購入時は工事明細等で、できるだけ建物付属設備等を多く計上しておく方が有利です。

4年で償却できる建物?

償却額を大きくするためのもう1つの仕組みが、「耐用年数」です。

耐用年数はあらかじめ、資産の種類に応じて決められています。例えば居住用物件であれば、鉄筋コンクリート造なら47年、木造なら22年です。

ただし、上記は新築の場合の年数で、中古物件であれば、経過年数に応じて耐用年数は短くなります。法定耐用年数を全部経過している場合、その資産は法定耐用年数の20%の年数で償却することができます。

居住用物件の例でいうと、鉄筋コンクリート造であれば最短9年、木造物件であれば最短4年です。
海外では、築100年の木造住宅が普通に取引されており、上記4年で償却できることから、節税商品として注目されています。

物件を売却すれば節税になる

減価償却を使って節税できるのは、償却費が計上できる間だけです。耐用年数を経過し、償却が終われば、本来の不動産収支に対して課税されることになります。
例えばそこで、その物件を売却し、新たな物件を購入すれば、また新しく減価償却を計上することができるようになります。

その場合、物件の売却に対して税金がかかります。ただし、所有期間5年超の物件については、売却に対する税金が20%(所得税15%+住民税5%)とされているため、自分の所得に対する税率が20%を超えている場合には、その税率差を利用して節税することができます。

仮に最高税率で考えれば、減価償却費で55%の税金を節税し、長期譲渡で35%(55%-20%)の税金を節税できる、これが不動産の「フロー(所得)の節税」です。

ただし、言うまでもなく、不動産投資はリスクが伴いますので、実行については慎重な判断をお願いします。

この話が経営者・資産家の皆様のお役に立つことができれば幸いです。

メール通信№436


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