事前通知なしの無予告調査の例示(改正事項)

(注)執筆当時の法律に基づいて書いていますのでご利用は自己責任でお願いします。


平成25年1月から税務調査が変わる

平成23年度改正で、調査手続の透明性及び納税者の予見可能性を高める観点などから、税務調査手続等を法律上明確化するなどの措置が行われました。

この改正により法定化された税務調査手続等については、原則として、平成25年1月1日以後に開始する税務調査から適用されることになります。

改正項目は主に7つ

先行実施されているものもありますが、大きくは以下の7点が改正項目となります。

1.事前通知の原則化及び明確化(事前通知をしない場合の例示)
2.帳簿書類等の預かりに対する預り証発行及び署名押印
3.調査結果の説明と修正申告等の勧奨(教示文に署名押印)
4.更正等は5年が基準に
5.不利益処分などを行う際の処分理由の記載
6.更正等をすべきと認められない場合の通知の明確化
7.再調査の明確化

不利益処分には理由が必要、再調査も明確化

1については後述します。

2については、帳簿書類等を税務署が預かる場合に、預り証を必ず発行し、その預り証に署名押印が必要になるということです。

3については、調査終了時の取り扱いとして、調査結果の説明及び修正申告等の税務署による勧奨を今後は原則実施するとなっています。(教示文への署名押印も必要)

※2、3については今までも実務慣行上ほぼ同様にされていたことです。

4については、税務署側が行う更正又は決定できる期間が原則3年から5年になったということです。(平成23年12月2日以後に法定申告期限が到来するものが対象、納税者側が行う更正の請求も同様に5年)

5については、税務署側が更正又は決定等の不利益処分や納税者からの申請を拒否する処分を行う場合には、その通知書に処分の理由を記載しなければならなくなったということです。

〔不利益処分〕
更正、決定、加算税賦課決定、督促、差押えなどの処分
〔申請に対する拒否処分〕
更正の請求に対して更正をすべき理由がない旨の通知、青色申告承認申請の却下などの処分

6については、今まで是認通知等と呼ばれていたものですが、これが明確化されました。

7については、一度税務調査等が行われた後でも、「新たに得られた情報に照らし非違があると認められるとき」は、再調査を行えるとなっています。

事前通知なしのケース

事前通知が原則とされましたが、税務署等が保有する情報から、
・事前通知をすることにより正確な事実の把握を困難にする、又は
・調査の適正な遂行に支障を及ぼすおそれがある
と認められる場合には、事前通知せずに調査を行うことがあるとしています。

但し、国税通則法関係通達において、「単に不特定多数の取引先との間において現金決済による取引をしているということのみをもって事前通知を要しない場合に該当するとはいえない」とされていますので、現金商売の会社には朗報といえるでしょう。

正確な事実の把握を困難にするの例示

先ほどの「事前通知をすることにより正確な事実の把握を困難にする」の例示として、国税通則法関係通達において、下記のように書かれています。

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法律に規定する「違法又は不当な行為を容易にし、正確な課税標準等又は税額等の把握を困難にするおそれ」があると認める場合とは、例えば、次の(1)から(5)までに掲げるような場合をいう。

(1)事前通知をすることにより、納税義務者において、法第127条第2号又は同条第3号に掲げる行為を行うことを助長することが合理的に推認される場合。
※法第127条第2号又は同条第3号とは、国税通則法の罰則規定を指します。

第127条 次の各号のいずれかに該当する者は、1年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処する。
一 省略
二 第74条の2、第74条の3(第2項を除く)、第74条の4(第3項を除く)、第74条の5(第1号ニ、第2号ニ、第3号ニ及び第4号ニを除く)若しくは第74条の6(当該職員の質問検査権)の規定による当該職員の質問に対して答弁せず、若しくは偽りの答弁をし、又はこれらの規定による検査、採取、移動の禁止若しくは封かんの実施を拒み、妨げ、若しくは忌避した者
三 第74条の2から第74条の6までの規定による物件の提示又は提出の要求に対し、正当な理由がなくこれに応じず、又は偽りの記載若しくは記録をした帳簿書類その他の物件(その写しを含む)を提示し、若しくは提出した者
(平成25年1月1日施行)

(2)事前通知をすることにより、納税義務者において、調査の実施を困難にすることを意図し逃亡することが合理的に推認される場合。

(3)事前通知をすることにより、納税義務者において、調査に必要な帳簿書類その他の物件を破棄し、移動し、隠匿し、改ざんし、変造し、又は偽造することが合理的に推認される場合。

(4)事前通知をすることにより、納税義務者において、過去の違法又は不当な行為の発見を困難にする目的で、質問検査等を行う時点において適正な記帳又は書類の適正な記載と保存を行っている状態を作出することが合理的に推認される場合。

(5)事前通知をすることにより、納税義務者において、その使用人その他の従業者若しくは取引先又はその他の第三者に対し、上記(1)から(4)までに掲げる行為を行うよう、又は調査への協力を控えるよう要請する(強要し、買収し又は共謀することを含む)ことが合理的に推認される場合。
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調査の適正な遂行に支障を及ぼすおそれがあるの例示

先ほどの「調査の適正な遂行に支障を及ぼすおそれがある」の例示として、同様に国税通則法関係通達において、下記のように書かれています。

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法律に規定する「その他国税に関する調査の適正な遂行に支障を及ぼすおそれ」があると認める場合とは、例えば、次の(1)から(3)までに掲げるような場合をいう。

(1)事前通知をすることにより、税務代理人以外の第三者が調査立会いを求め、それにより調査の適正な遂行に支障を及ぼすことが合理的に推認される場合。

(2)事前通知を行うため相応の努力をして電話等による連絡を行おうとしたものの、応答を拒否され、又は応答がなかった場合。

(3)事業実態が不明であるため、実地に臨場した上で確認しないと事前通知先が判明しない等、事前通知を行うことが困難な場合。
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事前通知をしなかった理由の説明義務は税務署側には厳密には無いのですが、無予告調査の場合には、このような事前通知をしない場合の例示を頭に入れた上で、その理由や背景等を尋ねてみるのは交渉材料になることもあるでしょう。

この話が経営者の皆様のお役に立つことができれば幸いです。

メール通信№306


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