経営者の個人保証はなくなるか

(注)執筆当時の法律に基づいて書いていますのでご利用は自己責任でお願いします。


「中小企業の再生を促す個人保証等の在り方研究会」

ここ約10年の間で、中小企業を含めた事業再生の関連制度がいろいろと整備されつつあります。

2000年 民事再生法施行(小規模個人再生含む)
2001年 私的整理に関するガイドライン制定
2003年 中小企業再生支援協議会設置
2006年 会社法施行

税制面でも、平成21年には「中小企業承継事業再生計画」の認定を受けると様々な税制優遇や金融支援等を受けられる制度が始まっています。

最近、こうした事業再生に向けての枠組み作りの中で、個人保証等の問題が、解決すべき課題として、認識され始めています。

中小企業庁の調査では、従業員20人以下の中小企業では約88%、従業員21~100人以下の中小企業では約86%の企業が個人保証を行っている、というデータもあり、事業再生の中で個人保証がネックになるケースが非常に多いのが実態です。

2004年の民法改正では、貸金等根保証契約についての極度額の定めがない根保証契約を無効とすること、保証期間の上限を5年(期間の定めがない場合は3年)とすることなどの改正が行われ、引き続き法整備も検討されています。
そんな中で、中小企業庁は私的研究会という形で「中小企業の再生を促す個人保証等の在り方研究会」というものを開催し、論点整理を行っていました。

先日、その研究会から報告書が発表されましたので、今回はその内容を簡単にお伝えしたいと思います。今回の報告書は、アンケートを中心とした実態調査となっています。

アンケート調査結果(一部)

●借入を行う際、金融機関から個人保証を求められた割合
代表者・・・80.0%
代表者以外の経営に関与する者・・・26.4%
第三者(経営に関与する者以外)・・・23.7%
人的保証を求められたことはない・・・17.0%

●個人保証の有無による貸出審査姿勢の違い(融資の可否判断)
非常に影響がある・・・5.7%
やや影響がある・・・49.5%
余り影響はない・・・40.2%
全く影響はない・・・4.7%

●代表者保証を徴求しない債務者企業の特徴
財務内容が良好である・・・61.5%
他行が代表者保証を受け入れていない・・・43.3%
サラリーマン社長である・・・35.8%
担保で全て保全されている・・・19.8%
会社保有資産が多い・・・16.6% など

●企業再生において、経営者がそのまま存続する場合、私財提供をどこまで求めるか
全ての資産提供を求める・・・31.7%(一定の経営者責任を果たしていれば)
自由財産を超える資産の保有を認める・・・28.8%
自由財産を除く全ての資産提供を求める・・・24.2%
経営基盤を維持するため、大幅に資産の保有を認める・・・1.7%
その他・・・13.7%

●金融機関が保証人に対して徹底的に保証履行を行わなければならない理由
債権放棄時の無税償却が認められなくなるため
株主から善管注意義務違反を問われるため
地域の他の債務者にモラルハザードを引き起こすため

報告書には、上記のような結果(一部)が掲載されています。

最後に、今後の課題として、一定の条件をクリアすれば保証は発生しない「停止条件付き保証契約」の普及や、金融機関が債権放棄等をしやすい税制上の仕組み作りなどが挙げられています。

今後、この問題は徐々にクローズアップされて議論が高まっていくことと思われます。個人保証の問題の背景には、金融機関側から考えるとそうせざるを得ない理由もあります。双方が納得できる仕組みを作り、中小企業経営者が前向きに経営できる制度になっていくことを願います。 

この話が経営者の皆様のお役に立つことができれば幸いです。

メール通信№235


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