岸田総理誕生、中小企業や税務への影響は?
(注)執筆当時の法律に基づいて書いていますのでご利用は自己責任でお願いします。
もくじ
岸田政権による令和版所得倍増計画とは?
9月29日の自民党総裁選で決選投票の末、岸田氏が総裁に選出されました。そして、今日召集の臨時国会で第100代首相に指名される予定です。
ちょうど9月30日で緊急事態宣言が解除されるタイミングで、今後、コロナ対策と経済の両立が求められます。政治の変化は、中小企業の経営にも影響大です。
そこで、現在、公表されている情報からわかる限りで、岸田政権が中小企業や経営者個人に与える影響をまとめてみます(執筆時点2021.10.1)。
まずは、総裁選時点で発表されていた岸田氏の政策です。
<コロナ対策>
・医療難民ゼロ
★困窮者や中小に給付金、経済対策数十兆円
・ワクチン接種証明書や無料PCR検査拡充
・健康危機管理庁(仮称)の創設
<エネルギー>
・原発再稼働を含む戦略策定
<社会保障>
・子育て世帯の住居・教育費支援
☆看護師・介護士らの給与増へ検討委員会
☆厚生年金の対象者拡大
<企業>
・四半期開示見直し、下請取引の監視強化
<デジタル・地方>
・5Gの早期展開、テレワークで2地域生活振興
<税制>
★金融所得課税見直し
岸田氏は、「令和版所得倍増計画」を掲げています。
総裁選勝利後の会見では、今後の経済対策について、「新しい資本主義の構築」「成長と分配の好循環」「幅広い国民の所得・給与を引き上げる経済政策」「大企業と中小企業、高所得者層と中・低所得層、大都市と地方の格差を埋める」などの発言もされています。
ここから読み取れる方向性としては、おおまかには、高所得者層や大企業への増税、中・低所得層や中小企業への減税、所得引き上げ策の実施などが予想されます。
年内に数十兆円の経済対策発表?
11月の衆院選や来年7月の参院選を意識されていることもあり、公約通り、年内に数十兆円規模の経済対策が発表されることになりそうです。
昨年度に実施された持続化給付金や家賃支援給付金についても、再支給が検討されています。
一般個人向けには、公明党が0歳から18歳を対象にした一律10万円の給付金を主張しているため、これらの給付が盛り込まれる可能性があります。
また、岸田氏は、個別の経済政策として以下のような項目も掲げています。
・オープンイノベーションへの税制優遇
・スタートアップへの徹底支援
・中小企業の事業再構築・生産性向上への支援
・企業による人的投資推進への支援
上記に関連する施策も、経済対策には盛り込まれるかもしれません。
金融所得課税は一律20%から引上げか?
高所得者層への増税としては、金融所得課税(税率一律20%)の引上げが検討されるようです。
従来、所得税は累進課税ですので、所得が多いほど税率が上がる仕組みになっていますが、実際には、2019年時点で所得が5,000万円超~1億円の層の所得税負担率は27.9%、20~50億円の層は18.9%と逆転現象が生じています(1億円の壁)。
その理由の1つが、上記の金融所得課税です。所得再分配の目玉として、実施される可能性があります。
その結果がわかるのが、毎年12月中旬に発表される来年度の税制改正大綱です。
今年は衆院選との関係で、大きな改正を議論する時間はないのではないか、との声もありますが、自民党税制調査会長の甘利氏が幹事長に就任したことにより、党内根回しなどがスムーズに進むかもしれません。
いずれにしても、今回の税制改正はしっかり注目しておきたいと思います。
この話が経営者・資産家の皆様のお役に立つことができれば幸いです。
メール通信№764
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