借金がある場合の相続における注意点と回避策

(注)執筆当時の法律に基づいて書いていますのでご利用は自己責任でお願いします。

相続・贈与

2012.10.22


賃貸マンション経営などで個人借金がある方へ

賃貸マンション経営を個人でされている方は、大家業の方に限らず、一般事業経営者やお医者さん、弁護士さん、公務員などでも多いです。

この場合、ご自身の相続時に借金が無い又は団信で補てんされるなどであれば問題ないのですが、借金が相続の対象になる場合には注意が必要です。
もちろんこれは、賃貸経営に限らず、一般個人事業における借金などでも、同様となります。

会社の借金ではなく、個人(被相続人)名義の借金が相続対象となる方は、今回のコラムをぜひご一読ください。

遺言や遺産分割協議に関わらず「借金は法定相続」される

被相続人が銀行などから借金をしている場合でその借金を長男が相続する、と遺言や遺産分割協議で決まったとします。
先ほどの賃貸マンションであれば、賃貸マンションという資産及びそれにひも付きの借金というイメージです。

では、この家族間での取り決めに銀行などの債権者は従わなければならないのでしょうか?

答えは、「否」です。

つまり、銀行などの債権者は家族間の取り決めを無視して、「相続人に対して法定相続分通りに請求」することができるのです。

もちろん、きちんと承継者である長男が借金を返済していければ特に問題とならないのですが、放蕩(ほうとう)息子などでその後、借金が返せなくなった時には、他の相続人は銀行から借金返済を直接請求されてしまうということです。

更には、ここでいう借金には実は、「保証債務」が含まれるのです!

ということは、被相続人が他者(社)の借入などに保証行為をしていて、その他者(社)が返済不能に陥った場合も同様に、銀行などの債権者から「相続人に対して法定相続分通りに請求」されるということです。

これは相続があってから○年後に請求されるというようなケースもあります。

友人や知人、親戚等他の事業者に対して保証行為をしていることが多い「中小企業経営者」にとっては、この保証債務は特に影響が大きいです。

銀行に免責的債務引受してもらう

では、こういった個人名義の借金が(債権者である銀行などに対しては)法定相続として認識されてしまうリスクを、どうやって回避すればいいでしょうか。

1つ目のオーソドックスな対策は、銀行などの金融機関との交渉で、「免責的債務引受に同意」してもらうです。(そのために生前に同意する旨の了承を取り付けておく)

免責的債務引受とは、「債務が債務者から引受人に移転し、従来の債務者は債務を免れる」というものです。
すると、長男のみが借金の正式な承継者となり、後に返済不能となっても、他の相続人である長女などに金融機関から請求がいくことはありません。

ただし、免責的債務引受を了承してもらえるかどうかは金融機関との個別交渉になります。

また、保証債務にはこの方法は使えません。

相続放棄+αが2つ目の対策

保証債務にも有効な対策としては、「相続放棄+生前贈与or生命保険金や年金受給権」があります。

例えば、先ほどの賃貸マンションであれば、賃貸マンションを承継する長男以外の子供である長女が、生前に相続時精算課税贈与で他の財産を受け取っておいて、相続時には「相続放棄」するのです。(精算課税贈与は税法上は相続により取得したものとみなされます)

生前贈与の代わりに、相続放棄しても受け取れる権利がある「生命保険金や年金受給権の受取人を長女にしておく」、でもいいでしょう。

「個人名義の借金は相続にはご法度」、「なるべく生前に整理しておく」、「他社や他者には保証行為をしない」と肝に銘じておいて下さい。(団信のある住宅ローンなどは別で、上記はあくまで一般論です。)

この話が経営者の皆様のお役に立つことができれば幸いです。

メール通信№307


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