私の相続分、あげます

(注)執筆当時の法律に基づいて書いていますのでご利用は自己責任でお願いします。

相続・贈与

2018.11.05


相続分の譲渡について、最高裁が初判断

先日、新聞でこんな報道がありました。(日本経済新聞10/21)

===============

遺産の受け取り割合(相続分)を親から生前に譲渡された子と、譲渡されなかった他の子との間で遺産の取り分が争われた2件の訴訟の上告審判決が最高裁第2小法廷(鬼丸かおる裁判長)であった。同小法廷は、相続分の譲渡は贈与にあたるとの初判断を示した。判決は19日付。

~(中略)~

今回のケースでは、亡父の遺産に対する相続分を母親が子に無償で譲渡。母親の死後、譲渡された子に対し、他の子が遺留分に相当する財産を渡すよう求めていた。訴訟では、不動産や現金などの具体的な財産ではなく、受け取る遺産の割合を示す相続分を譲渡することが贈与にあたるかどうかが争点となった。

第2小法廷は判決理由で、相続分に財産的な価値がない場合を除けば、譲渡によって経済的な利益が移転したことになると指摘。遺産を相続する人の間での無償譲渡は贈与にあたるとした。1件の訴訟については、贈与に当たらないとした二審判決を破棄し、審理を東京高裁に差し戻した。

=================

簡単にまとめると、母親が、父親の相続についての相続分を生前に長男に譲渡したところ、長女から自分の相続分はどうなるのか、という訴えがあり、裁判になったという事例です。

結論としては、生前の相続分の譲渡は贈与として、遺留分の減殺請求の対象になるという判断となりました。

相続分を譲渡したら、どうなるのか?

自分の相続分を他人に譲渡することなどできるのか、ということになるのですが、これは上記にもあるように可能です。
譲渡先は相続人に限らず、全く無関係の第三者に対して、自分の相続分を譲渡することもできます。その場合、その相続分を譲渡された第三者が、遺産分割協議に参加することになります。

一般的には、あまり使われない方法ですが、相続分を譲渡すると、自分は遺産分割協議に参加しなくて済むため、揉めている相続においては、分割協議から解放されたいがために使われることもあるようです。

ただし、課税関係には注意が必要です。
通常、相続人間で相続分の譲渡をする場合には、お互い相続税の納税義務者ですので、相続税の枠内で課税関係が完了しますが、相続人以外の者が相続分の譲渡を受けた場合には、贈与税が課税される可能性があります。

今回、「相続分の譲渡は贈与である」との判断が出たことにより、このあたりの課税関係も今後変わってくるかもしれません

相続分の譲渡などしてはいけない

ただ、この事例の本質的な問題は、課税関係がどうなるとか、そんなことではなく、そもそも相続分を譲渡するような事態に至っている時点でアウトだということです。
こうなる前に、きちんと親が方向性を示し、子供を納得させ、遺言を残すなどして、対応すべきだったと思います。
自分の相続分が要らないのであれば、相続放棄するなり、遺産分割協議で「私は要らない」と言えばよいだけです。

しかし、それでは、自分が放棄した持分の行き先まで決めることはできません。
恐らく、「自分の相続分は要らないけど、この子にだけはやりたくない」とかそういう負の感情があるから、こういうことになっているはずです。

円満な相続に導く立場の親が、逆に揉める原因を自分で作ってしまっている、というのが、失敗の最大の原因です。
とはいえ、それぞれの家族にそれぞれの事情があり、他人が思うほど単純ではない、というのもまた事実です。
どこまでいっても、絶対的な正解というものはないのかもしれませんが、こういう事例を見て学んでいきたいものです。

この話が経営者・資産家の皆様のお役に立つことができれば幸いです。

メール通信№615


Copyright all rights reserved By マネーコンシェルジュ税理士法人

その他の最新税務関連ニュース

大阪税理士コラムのカテゴリー一覧

税務情報を「メール通信」「FAX通信」「冊子」でお届け。

中小企業の経営者及び総務経理担当者・相続関係者向けに、「知って得する」「知らないと損する」税務情報を、メルマガ、FAX、冊子の3種類の媒体でお届け。
配信日時などの詳細は下記をクリックしてご確認下さい。
会計事務所の方はご遠慮頂いております。

  • メール通信 ご登録&ご案内
  • FAX通信 ご登録&ご案内
  • 冊子媒体 ご登録&ご案内

今なら初回面談無料!
お気軽にお問い合せください。

0120-516-264受付時間 9:00~17:30(土日祝休)

メールでのお問い合せ

ページトップ