M&A件数は90年代に比べて3倍以上
(注)執筆当時の法律に基づいて書いていますのでご利用は自己責任でお願いします。
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もくじ
M&A件数は90年代に比べて3倍以上
株式会社レコフデータによると、1990年代に年間500件前後であった日本企業のM&A(合併や買収)件数が、2000年以後は常時1,500件以上と3倍以上に増加しています。
リーマンショックや震災の影響もありましたが、昨年でも1,687件のM&Aが行われています。
但しこの数字は公表された上場企業を中心とするM&A件数を集計しているに過ぎませんので、皆さんに直接影響する非公開会社である中小企業を中心とするM&A件数は含まれていません。
多分同数ぐらいは非公開中小企業でM&Aが行われているであろうと推測しますので、大体、年間1,687件×2=3,374件となり、ざっくり毎日約10件のM&Aが日本で実施されていることになります。
この件数は多いと思われるかもしれませんが、実際私の周囲でのM&Aでは、売却価額何十億円というものはほとんどなくて、例えば「売却価額1,000万円」とか、買収会社の規模でいうと「売上規模1億円で従業員数5名」といったものです。
皆さんに知っておいて欲しいのは、「取引先など周囲でM&Aが検討されているようだ」とか「こういった会社を買いませんか」などという話が出ても、なるべく平常心で対応してもらえればということです。
「M&Aは特殊で自分とは関係の無い事項」ということでは、中小企業においても無くなってきました。
大企業M&Aではアジア重視
M&Aの件数が2000年以後増加しているとはいえ、その中身は、「大企業を中心とするM&A」と「中小企業を中心とするM&A」で大きく異なります。
大企業を中心とするM&Aでは、主に「IN-OUT」型(日本企業が海外の企業を買収する)が増加しています。
特に近年、アジア系の企業を買収する例が多くなっています。
これは、食品系企業の買収が多いことからもわかるように、新興国であるアジアの成長力を自社に取り込もうという動きです。
また、昨今の円高や世界的株安も日本企業の海外買収に拍車を掛けています。
では、大企業を中心とするM&Aは中小企業では関係がないのかといえば、そんなことはありません。
取引先がこのようなM&Aをする(又はされる)ことになれば、今後の取引そのものにも影響があるでしょうし、入金や支払日などの取引条件の変更を要求されることもあるでしょう。
自社にとって大事な取引先については、新聞報道などを逐一チェックしておくことが大切です。
また、大企業の事業再編に伴って売り案件が中小企業のM&A市場に流れてくることもあります。
この場合は、単に大企業の看板というだけで楽観視せず、その会社の現状及び将来性を出来るだけ客観的に多角度から把握して、冷静に対応することが重要です。
中小企業M&Aでは後継者不在
中小企業を中心とするM&Aが活発な理由としては、
・売り手→「後継者不在」、「先行き不安」、「健康上の理由」
・買い手→「事業拡大」、「シナジー効果」、「技術承継」、「許認可承継」、「従業員確保(人材不足の業界)」
などが理由です。
特に、日本の中小企業経営者の高齢化にともなって、後継者不足という問題が顕著になってきています。
M&A今後の方向性
日本のM&A件数は、実はリーマンショック前後では大きくアップダウンをしている(それでも1,500件以上です)のですが、中小企業にとって大事なのは大きな視点ではないかと思います。
そういった意味では、90年代に比べて今は3倍以上のM&Aが行われていて、それは何も大企業を中心とした何千万円何億円という話ではなくて、「買収金額0円とか数百万円といったケース」や「売上規模1億円以下といったケース」などであるということです。
では、今後のM&Aの方向性はどうなるのでしょうか。
これはズバリ、更に増加していくと考えられます。
理由は色々とありますが、主には2つです。
1つは、先ほども書いた「後継者不足」問題です。
そしてもう1つは、「ベンチャー企業の出口戦略としてM&A市場が活発になる」と思われるからです。
現在日本では、ベンチャー企業がベンチャー精神のもとにリスクテイクをして大きく成長していくにあたってのゴールは、「上場」しか基本的にはありません。
しかし、昨今のフェイスブックやグルーポン、YELPなどアメリカベンチャー企業が活況なのは、会社成長の出口として、上場以外にも、「企業価値を高めた状態で他の会社に売却(M&A)する」という手段が一般化されているからだと言われています。
実際、未上場株の売り買いも活発ですし(日本では怪しげな取引の代表格ですが)、下記のグラフを見ていただければわかるように、アメリカにおけるベンチャー企業のExit件数は、90年以後急増していて、現在ではそのほとんどがIPOではなくてM&Aとなっています。
【ご参考:経済産業省HP|未上場企業が発行する種類株式に関する研究会 報告書】
http://www.meti.go.jp/report/downloadfiles/g111202a01j.pdf
日本はこの分野ではアメリカに相当遅れていますが、今後是正されてくるのではないかと思います。
怪しいM&A業者にご注意を!
ここまでM&Aが中小企業でも増加していると書きながら水を差すようですが、買う側で考えると、出来るだけM&Aをせず自社独自で拡大を図る方が一般的にはベターとなることが多いのではないかと思います。(あくまで一般的には、です。)
また、実際M&Aなどで会社を買収しても、「従業員の意識の違い」や「人事制度の整合性」、「属人性のある売上先を中心とした売上減」、「M&Aによる本体への悪影響」など、色々と大変なことが多いのも事実です。
とはいえM&Aを実施してうまくいっている中小企業ももちろんありますし、何より、M&Aによる相乗効果などメリットも多数ありますので、事前の十分な検討を踏まえて検討されるのがいいでしょう。
最後に、M&A市場というのは、時に数百万円、数千万円となる高額の手数料が転がりこむ業界でもあります。
つまり、M&Aを紹介する又は携わっている業者には、「怪しげな業者」も多数存在します。時に、暴力団とつながりがある方もおられます。
昨今新聞記事では、未上場株を巡るトラブルが多数散見されますが、同様にこのM&A市場にも怪しい輩が多数存在する、ということは是非経営者の皆様に知っておいてもらいたいことです。
※中小企業におけるM&Aを成功させる(買い手、売り手)には、いくつかのポイントがあります。
例えば、「購入(売却)価額の考え方」や「購入(売却)方法別のメリット・デメリット」、「購入(売却)時に確認しておくべき事(紹介先や売却理由等)」などです。
過去にいくつかの失敗をしてきた経験を踏まえて、近いうちにこのコラムで順次解説をしていきます。
この話が経営者の皆様のお役に立つことができれば幸いです。
メール通信№276
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