事業承継対策としての経営者退職金の活用

(注)執筆当時の法律に基づいて書いていますのでご利用は自己責任でお願いします。


創業10年で引退後を考える

創業した年齢にもよりますが、創業時に新経営者の方にお話しするのが、「創業して10年経ったら、自分の引退後を考えられるぐらいに、これからの10年頑張ってくださいね」です。

実際このことが実現できる会社は、規模の大小は別にして、かなりの優良会社かもしれません。

しかし私がこのことを創業時にあえてお話しするのは、会社が儲かっている場合もそうでない場合も、「創業10年後ぐらいには、一度経営者が立ち止まって将来の会社、経営者、従業員、取引先、お客さんなどを考えることが重要」だと思うからです。

少し保守的に思われるかもしれませんが、会社全体が高齢化する前の早い段階で、この先10年後や20年後の会社の人員構成などをイメージしておくことは、今後の会社の大きな方向性の判断に有効だと思います。

例えば、今伸びている会社でも、現在の従業員の10年後をイメージすると、単に現在の延長としての拡大ではなく、あえて新たな分野に保険の意味で投資をしておくことなどが必要となるかもしれません。

経営者の退職金準備は会社を救う

会社の将来を安定させるために重要な事の1つとして、「経営者の退職金準備」があります。
会社がうまくいっていればその退職金は純粋に経営者個人の資産とすればいいでしょうが、そうでない場合などは会社の簿外資産的なイメージとなり、それが従業員への退職金原資となることもあります。

つまり、退職金支給時に、会社にお金が足りなければその一部を役員貸付金(会社からみると役員借入金)として会社にお金を貸し付けるためです。
(退職金準備中でも会社資金不足となれば解約等で会社に資金を還流させます。)

また、この簿外資産でもある「経営者の退職金」は、事業承継時においても、相続税対策や遺産分割対策などにも有効に働くのでお勧めです。

(事業承継対策としての)経営者退職金の活用

経営者退職金の原資確保のための方法としては、単に積立預金をするや、節税効果もある小規模企業共済や民間生命保険を活用したものなどがあります。

このあたりは過去にも何度かコラム記事で説明していますので、今回は「退職金の支給」そのものが、税務上有利である点について解説します。

「1粒で3度おいしい退職金」などともいわれますが、これは、

・受け取る個人側の所得税・住民税で、1/2課税+大きな控除+分離課税
・支払う法人側の法人税で、最終役員報酬月額×役員在位年数×功績倍率(社長の場合3.0が目安)ぐらいまでは全額損金可能
・死亡退職金の場合は受け取る相続人側の相続税で、500万円×法定相続人数まで非課税

などがあるからです。

退職金の準備はお早めに

特に受け取る個人側では、大幅な節税となり、結果手取りが増えます。

おおまかにですが、3,000万円の役員報酬に対しては約1,000万円ほどの税金がかかりますが、これを勤続年数30年の退職金で支給できると、税金は約200万円ほどになります。

その差は1,000万円-200万円=約800万円にも上ります。

また、財源さえ事前に準備できていれば、支払う法人側でも3,000万円の損金がつくりだせたことになります。

過大となると法人の損金性を否定されますので、その基準としては、上記の最終役員報酬月額×役員在位年数×功績倍率(社長の場合3.0が目安)を1つの指針としてください。

3,000万円の損金ということは、実効税率を40%とすると、3,000万円×40%=1,200万円の節税効果があると考えられます。

この退職金の支給を事業承継と併せて考えると、(繰越欠損金の活用を前提として)税務面から後継者の前途を応援しているということにもなります。

最後に繰り返しますが、年齢などによって多少の違いはあるでしょうが、「創業10年」や「40歳」などを1つの区切りに、ぜひ早めの経営者の退職金準備を、会社の存続・発展のために取り掛かりましょう。

この話が経営者の皆様のお役に立つことができれば幸いです。

メール通信№293


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