中古ベンツがなぜ節税に有効と言われているのか?

(注)執筆当時の法律に基づいて書いていますのでご利用は自己責任でお願いします。


減価償却とは?

事業などの業務のために用いられる建物、建物附属設備、機械装置、器具備品、車両運搬具などの資産は、一般的には時の経過等によってその価値が減っていきます。このような資産を「減価償却資産」といいます。

他方、土地や骨とう品などのように時の経過により価値が減少しない資産は、減価償却資産ではありません。

減価償却資産の取得に要した金額は、取得した時に全額必要経費になるのではなく、その資産の使用可能期間の全期間にわたり分割して必要経費としていくべきものです。

この使用可能期間に当たるものとして法定耐用年数が法令により定められています。減価償却とは、減価償却資産の取得に要した金額を一定の方法によって各年分の必要経費として配分していく手続です。

(1)使用可能期間が1年未満のものまたは取得価額が10万円未満のものは、その取得に要した金額の全額を業務の用に供した年分の必要経費とします。

ということは、取得価額10万円以上(税込経理か税抜経理による)のモノの購入は、資産計上が必要です。

(2)ただし、取得価額が10万円以上20万円未満の減価償却資産については、その3分の1に相当する金額をその業務の用に供した年以後3年間の各年分において必要経費に算入することができます(一括償却資産という)。

(3)また、資本金1億円以下等一定の要件を満たす青色申告者が取得した取得価額10万円以上30万円未満の減価償却資産については、その取得価額の合計額のうち300万円に達するまでの取得価額の合計額をその業務の用に供した年分の必要経費に算入できるという特例があります(少額減価償却資産という)。

【まとめ】
(1)10万円未満→経費
(2)10万円以上20万円未満→1/3経費
(3)10万円以上30万円未満→年間300万円まで一括経費

(2)にも(3)にも該当する場合には、選択できます。

令和4年4月1日以降に取得した減価償却資産で貸付けの用に供したもの(主要な業務として行う貸付けに供するものを除く)については、上記(1)ないし(3)の適用はありません。

耐用年数

資産計上した減価償却資産は、法定耐用年数で減価償却します。

(定率法減価償却率)
耐用年数 定率法の償却率
2年    1.000
3年    0.833
4年    0.625
5年    0.500
6年    0.417

一般に社長が得意先や仕入れ先等に出向く際に使用する新車ベンツなら、法定耐用年数は6年です。

3月決算法人が4月に新車ベンツを1,000万円で購入した場合の購入事業年度の減価償却費は、1,000万円×0.417×12/12=417万円です。

中古の耐用年数のトリック

中古資産の耐用年数は、法定耐用年数ではなく、その事業の用に供した時以後の使用可能期間として見積もられる年数によることができます。

しかし、実務上は次の簡便法により算定した年数とするのが一般的です。

(1)法定耐用年数の全部を経過した資産
→その法定耐用年数の20パーセントに相当する年数

(2)法定耐用年数の一部を経過した資産
→その法定耐用年数から経過した年数を差し引いた年数に経過年数の20%に相当する年数を加えた年数

なお、これらの計算により算出した年数に1年未満の端数があるときは、その端数を切り捨て、その年数が2年に満たない場合には2年とします。

では、4年落ちのベンツを同じく4月に500万円で購入した場合の耐用年数はこうなります。

(6年-4年)+(4年×20%)=2.8年→2年

2年の定率法の償却率は1.000です。

つまり、3月決算法人が、期首である4月に4年落ちのベンツ500万円を購入した場合の購入事業年度の減価償却費は、500万円×1.000×12/12=500万円となります。

ただし、備忘価額1円残りますので、正確には4,999,999円です。

また、減価償却費は月数按分ですので、先述の中古ベンツを期末の3月に購入した場合なら、減価償却費は500万円×1.000×1/12=416,666円です。
そして、翌事業年度の減価償却費は備忘価額1円を残した4,583,333円となります。

減価償却費総額は変わりませんので、どの事業年度で経費となるかが変わるだけです。

この話が経営者・資産家の皆様のお役に立つことができれば幸いです。

メール通信№912


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