“壁”は本当になくなるのか?
(注)執筆当時の法律に基づいて書いていますのでご利用は自己責任でお願いします。
もくじ
「103万円の壁」が持つ2つの意味
今、いわゆる「103万円の壁問題」が大きな話題となっています。
国民民主党は、103万円を178万円に引き上げる旨の主張を行っており、現在議論が行われています。
まず、「103万円の壁」には2つの意味があります。
1つは、本人に所得税がかかるかどうかのラインです。
給与収入のみの場合、年収103万円を超えると、本人に所得税がかかってきます。
もう1つは、扶養控除(「配偶者」ではありません)の対象となるかどうかのラインです。
給与収入のみの場合、年収103万円を超えると、扶養者の扶養控除の対象から外れ、扶養者は扶養控除を受けられなくなります。
扶養控除の金額は被扶養者の年齢により異なり、以下のようになっています。
16歳以上19歳未満 所得税38万円(住民税33万円)
19歳以上23歳未満 所得税63万円(住民税45万円)
23歳以上70歳未満 所得税38万円(住民税33万円)
70歳以上(割愛)
なお、配偶者については、現在年収150万円までは、配偶者控除を満額38万円受けられるようになっています。
(扶養者の合計所得金額が900万円以下と仮定します、以下同様)
(別途、企業が年収103万円以下の配偶者や家族について、配偶者手当や家族手当を支払うため、手当をもらうために年収を抑えるという意味での壁もあります。)
壁を超えると、税金はどれだけ増えるのか?
1つ目のラインについて、103万円を超えた場合に手取り額がどのくらい減るかですが、おおまかには、
年収110万円→手取り1万円減
年収120万円→手取り3万円減
といった感じです。
受け取り方には個人差があると思いますが、月額約830円や2,500円と考えると、一般的にはそれほど大きな金額ではないのではと思います。
ひとり親控除や勤労学生控除など、他に適用できる所得控除があれば、さらに手取り額の減少は緩和されます。
一方、もう1つの扶養控除のラインについては、被扶養者の年収が103万円を超えると、年齢により38万円や63万円という扶養控除(所得税の場合)が扶養者側で受けられなくなります。
単純に税率を30%(所得税20%住民税10%)とすると、約11~17万円の増税となります。こちらの方が大きな影響があります。
税金だけではない、社会保険にも壁がある
年収103万円を超えて働こうとする場合、もう1つ気にしないといけないのが、社会保険です。
現在、従業員数51人以上の会社で働く場合、年収106万円を超えると、社会保険に加入する必要があります。
年収106万円で社会保険に加入すると、年間約15万円の社会保険料がかかります(学生は原則対象外)。
従業員数51人未満の会社であれば、年収130万円までは社会保険料がかかりませんが、厚生労働省は来年、会社の従業員数に関わらず、週の労働時間が20時間以上であれば、原則として社会保険に加入するよう改正する方向で検討しています。
週の労働時間が20時間ということは、例えば大阪で最低時給で働く場合、1,114円×20h×52週≒116万円となります。
「103万円の壁」は「週20時間の壁」へ
ちょっと頭が混乱してきますね。まとめます。
来年、103万円の壁が(2つの意味の両方において)178万円まで引き上げられ、社会保険加入要件は上記の通りに改正されたと仮定します。
◇配偶者の場合
週20時間未満で働けば
→本人の税金0、社会保険料0、扶養者の配偶者控除満額
となり、社会保険において「週20時間の壁」という新しい壁ができます。
◇扶養親族である学生
年収178万円以下で働けば、
→本人の税金0、社会保険料は学生のため不要、扶養者の扶養控除満額
となります。
◇扶養親族であるフリーター
週20時間未満で働けば
→本人の税金0、社会保険料0、扶養者の扶養控除満額
となり、こちらも新たに「週20時間の壁」となります。
ただし、「週20時間の壁」は上記の通り、大阪に当てはめると、計算上は年収約116万円となりますが、この「週20時間」に残業時間は原則含まないため、実際には所定労働時間が週20時間未満であれば、年収116万円を超えても社会保険に加入する必要はないと思われます。
そういう意味では、年末に就業時間を減らすという風物詩は一部でなくなるかもしれませんね。
※今回の内容は決定事項ではありません。今後の議論によっては、異なる結果となる可能性がありますので、ご了承ください。
この話が経営者・資産家の皆様のお役に立つことができれば幸いです。
メール通信№927
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