税務調査を円滑に乗り切るためには

(注)執筆当時の法律に基づいて書いていますのでご利用は自己責任でお願いします。


税務調査の対象になりやすい会社

会社経営をしている限り、税務調査は避けられません。今回は、税務署と上手にお付き合いするポイントをお伝えしたいと思います。

まず、税務調査の対象になるかどうかは、どうやって決まるのでしょうか。抽出基準ははっきりとはわかりませんが、一般的には、以下のような会社は対象になりやすくなります。

調査対象になるのを回避する方法はありませんが、有効なのは、税務調査が予期できる場合には、あらかじめ決算書等に注意書きをしておくことです。

税務調査の対象となりやすい会社

  • ・売上高が大きい会社
  • ・黒字会社
  • ・急成長した会社
  • ・長期間税務調査が実施されていない会社
  • ・現金売上がある会社
  • ・決算書で異常値がある会社
  • ・決算書や経営分析項目(売上総利益など)で異常値がある会社
  • ・同業種と比較して申告所得が低い会社
  • ・代表者や関連会社との取引がある会社
  • ・経営者個人で大きなお金の動きがあった会社
  • ・多額の投資を行った会社
  • ・取引先や従業員とトラブルがあった会社
  • ・マスコミ等で問題になった会社


例えば、売上の急減や多額の特別損失の計上など、異常値が発生しており、このまま提出すると、税務調査の可能性が想定される場合、決算内訳書や法人事業概況書などに、異常値発生の理由を記載しておきます。税務署がそれを見て、その理由に納得すれば、税務調査は回避できるかもしれません。

事前準備

税務署からの事前通知があれば、税務調査の準備で意外に重要なのは、調査場所の選定です。調査場所を選ぶポイントは、できるだけ通常業務が行われておらず、ある程度のスペースが確保できることです。可能であれば、フロアの違う別室の会議室などが最適です。社内の動きが全て見渡せるような場所にしてしまうと、調査官に様々な情報を与えてしまうことになるため、できるだけ避けましょう。

準備書類は以下の通りですが、準備時に注意したいのは、メモ書きや付箋などのチェックです。これらが付いたままになっていると、調査官に調査の糸口を与えることになってしまいます。

また、契約書関係については、必ず印紙が貼付・割印されているか確認しておきましょう。印紙がない場合の過怠税は本税の3倍にもなりますので、十分注意して下さい。

税務調査の準備書類

  • □税務申告書・税務署への届出書
  • □帳簿書類・請求書及び領収書など
  • □定款・議事録
  • □社内規程
  • □賃金台帳・源泉徴収簿
  • □契約書・稟議書など

税務調査当日の注意点

税務調査というのは、やはり不安なものですが、過度に神経質になる必要はありません。具体的には、次の3つを実践して頂ければと思います。
第1条    普段通りに
第2条    聞かれたことだけ答える
第3条    わからないことはわからないと答える

最も大事なことは、「普段通りに」対応することです。当たり前のように思われるかもしれませんが、意外に税務調査の現場では、緊張してこの当たり前のことができません。普段通りに対応できるだけで、調査はかなり穏便に進みます。

2つ目は、「聞かれたことだけ答える」ということです。ついつい緊張してしゃべり過ぎてしまうというケースを目にしてきましたが、余計な疑いをもたれないためにも、余計なことは話さないようにして下さい。

3つ目は、「わからないことはわからないと答える」ことです。調査官の質問に対しては、何も即答する必要はありません。わからなければ、「後で調べて答えます」、と返答するようにしましょう。

追加税額をできるだけ減らすためには

税務調査を受けるとき、納税者にとって明確な目標が2つあります。

1つは、「限りなく追加税額を減らす」ことです。
税務調査で支払う追加税額は、法人税だけではありません。法人住民税などの地方税、さらに附帯税といわれる延滞税や加算税など、これら全てを支払う必要があります。特に、加算税については、仮想隠蔽があった場合には重加算税の対象となり、通常の加算税にさらに割増しされることとなります。「追加税額を減らす」というのは、これら全てをトータルで最小限に抑える、ということです。

そのためには、調査の途中で中途半端に対応するのではなく、全ての指摘事項が出揃ってから、修正項目や修正年度を絞ってもらう、期ズレ項目は来期の修正で容認してもらう、などの交渉をすることが必要です。

税務調査を円滑に乗り切るためには

出典:財務省「加算税の概要」

https://www.mof.go.jp/tax_policy/summary/tins/n04_3.pdf

次回以降の調査を見据えた戦略

もう1つの目標は、「真面目な納税者だと税務署にわかってもらう」ことです。

これだけでは、ピンとこないかもしれませんが、これはある意味、追加税額を減らすことより重要な目標です。そして、この目標を税務調査時に明確に意識できている方は少ないと思います。

会社経営を続けていく限り、税務調査は今後も受け続けることになります。今回の調査で終わるわけではありません。重要なことは、今後、長期的に税務署と円滑な関係を築き、「あの会社は適正な納税者で、特に問題ない」という認識を持ってもらうことです。それが、今後の税務調査回数の減少、調査日数の減少などにつながります。

税務調査は通常、3~5年おきに実施され、同じ担当者が同一の法人を担当し続けることはないため、税務調査時には、次の調査担当者に向けて、署内で引継書が作成されると言われています。この引継書に、最終的に「適正な納税意識あり、特に問題なし」と書いてもらうことが、納税者にとって最大の目標です。

税務調査の際には、常にこの2つの目標を忘れずに臨んでいただければと思います。

税務ニュース№533


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