過熱する全損定期保険、動き始めた金融庁

(注)執筆当時の法律に基づいて書いていますのでご利用は自己責任でお願いします。


業界騒然?!画期的保険の設計意図は?

昨年、ある生命保険会社が法人の決算対策需要として、全額損金の長期定期保険を販売し、業界で話題となりました。

それは、「傷害保障重点期間設定型長期定期保険」というものです。

現在、法人が決算対策として、全額損金で生命保険に加入しようとすると、正直、あまり良い商品はありません。解約返戻率が低かったり、保険金の割に保険料が高く効率が悪かったりと、なかなか満足できる商品がないのが実情です。

そこに目を付けた冒頭の生命保険会社が、こんな保険を設計しました。

まず、保険期間を二つに分けます。
前半の保険期間は、傷害による死亡に重点的に備える期間として、傷害以外の死亡については、保険金を大幅に減額する(多くの場合、元本割れ)設定とします。
後半の保険期間では、通常の定期保険として死亡保障を設定します。

さて、この保険には、設計上どのような意図があるのでしょうか

高い解約返戻率を全損で実現

ポイントは、2つあります。

1つは、保険期間を二つに分けることによって、保険料の過払い状態を発生させることです。

保険料は前半も後半も変わらず同じ金額ですので、前半の保険期間については、傷害以外の死亡保険金が大幅に減額されるにもかかわらず、後半の保険期間と同額の保険料を支払っています。

つまり、前半の保険期間については、保険料を払い過ぎている計算になります。
この場合、もし、前半の保険期間の途中で解約すれば、その時点では保険料を払い過ぎているわけですから、その分保険料が戻ってくることになり、高い解約返戻率を設定することができる、これが1つ目のポイントです。

2つ目のポイントは、前半の保険期間に傷害保険をミックスさせていることです。

前半の保険期間について、傷害保険としての性格を強めることにより、現行の通達上は、はっきりとした取扱いは出ていないものの、課税実務上は全額損金として処理されます。全額損金で高い解約返戻率を実現する、というのがこの保険の最大のウリなのです。

さらに、前半の保険期間を傷害保険寄りに設定することにより、健康状態の告知も簡単なもので加入でき、決算対策としての突発的な加入に対応しやすいというメリットもあります。

今後の改正の可能性は?

巷の噂では、この保険会社は、上記商品をかなりの規模で販売したようです。
そして、それを見た他の生命保険会社も、その後続々とこの市場に参入し、販売合戦を繰り広げています。

問題なのはその後です。
法人の節税保険については、これまでも過激(?)な生命保険が販売される度に、国税庁が通達を改正し、抜け穴を塞ぐということが繰り返されてきました。

今回についても、それは例外でないようです。
朝日新聞によると、上記の種類の生命保険販売の過熱により、金融庁は各生命保険会社に対して、法人向け定期保険の実態を問うアンケートを送付しているようです。展開次第では、今後何らかの改正が行われる可能性が出てきました。

最悪のケースでは、過去に契約した分も含めて、今後一切全損処理ができなくなる可能性もありますが、改正前に契約した分については、全損処理が認められることの方が多いため、今後は、駆け込み販売を狙って、さらに営業がヒートアップするかもしれません。

動いているのが国税庁ではなく金融庁であること、なども含めて、実際に改正になるかどうかは、現時点では何もわかりません。

ただし、生命保険は、上記のような改正リスクが常に伴う商品です。決算対策で生命保険に加入する場合には、その点を理解した上で契約するようにして下さい。

また、生命保険の加入によって”節税”できるわけではなく、あくまで”課税が繰延”されるのだという点にも注意して下さい。

ただ、「使い方」を理解すれば、生命保険は大きな武器となることは間違いありません。メリットとデメリットを把握した上で、効果的に利用するようにして下さい。

この話が経営者・資産家の皆様のお役に立つことができれば幸いです。

メール通信№601


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