遺留分が変わる!その1

(注)執筆当時の法律に基づいて書いていますのでご利用は自己責任でお願いします。

相続・贈与

2008.09.30


事業承継における3つの問題

10月1日から、経営承継円滑化法がスタートした。今後の中小企業の事業承継に大きな影響を与えることは間違いない。まだ、税制面の詳細が決定しておらず、経営承継円滑化法自体も全てが施行されたわけではないが、ほぼ大枠はこれで出来上がったことになる。

この経営承継円滑化法が制定されたのは、中小企業の事業承継における大きな3つの問題を解決するためである。それは、“遺産分割”“相続税”“資金調達”の3つである。

後継者に自社株式等を承継させようと思っても、民法には遺留分の規定があるため、多くの事業承継ではそれがネックになることが多い。それが“遺産分割”の問題である。

また、自社株式等の評価額が高ければ、多額の相続税を納税しなければならない、という“相続税”の問題がある。

“相続税”以外にも、後継者に事業用資産を集中して相続させるためには、それらの取得費用が必要であったり、事業承継後の一時的な信用低下による業績悪化を補うための運転資金が必要であったりする。これが“資金調達”の問題である。

これらの3つの問題を解決するために、経営承継円滑化法では「遺留分に関する民法の特例」、「金融支援措置」、そして平成21年度税制改正で創設される予定である「取引相場のない株式等に係る相続税の納税猶予制度」の3つの措置を用意している。

遺留分とは?

今回と次回の2回に渡って、この中の遺留分の特例を取り上げて解説していきたい。今回は、現行の遺留分制度についてご紹介する。

原則として、自分の財産というのはどのように処分しようと個人の自由である。従って、生前にどのような遺言を残そうと、それは被相続人の自由であり、それ自体を否定することはできない。ただし、被相続人の家族など一定の相続人については、その財産形成にある程度の貢献はしているだろうし、その相続人の生活を保障するためにも最低限の相続分は認めることとしている。それが遺留分である。

遺留分は法定相続人に対して認められている権利であるが、被相続人の兄弟姉妹とその子供については認められていない。具体的な遺留分は、個々の相続人の法定相続分の1/2とされているが、直系尊属のみが相続人の場合は1/3となる。

遺留分算定の基礎となる財産の範囲は、被相続人が相続開始時点で有している相続財産はもちろんのこと、過去に被相続人から相続人に対して行われた生計の資本としての贈与も含まれる。この場合は、その贈与が何年前に行われたものであっても、遺留分算定の範囲に含まれることとなる。

自分が実際に相続等により取得した財産の価額が、上記の算定に基づいて計算された遺留分より少なかった場合には、その相続人は自分の遺留分を侵害した他の相続人に対して、遺留分の減殺請求をして、その分の財産を取り戻す権利が認められている。これが遺留分の減殺請求権である。

この制度があるために、これまで中小企業の事業承継は後継者に財産を集中することが難しかった。遺留分の放棄という制度もあるにはあるが、そのためにはその本人が個別に家庭裁判所に申し立てをしないといけないため、非常にハードルが高く、実際にはあまり浸透していない。

次回は、経営承継円滑化法で新設された遺留分の特例についてお届けする。

税務ニュース№95


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