成年後見制度を利用するとどうなってしまうのか?

(注)執筆当時の法律に基づいて書いていますのでご利用は自己責任でお願いします。

相続・贈与

2018.10.22


成年後見制度とは?

法務省のHPから、成年後見制度の概要を引用すると、
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認知症、知的障害、精神障害などの理由で判断能力の不十分な方々は、不動産や預貯金などの財産を管理したり、身のまわりの世話のために介護などのサービスや施設への入所に関する契約を結んだり、遺産分割の協議をしたりする必要があっても、自分でこれらのことをするのが難しい場合があります。

また、自分に不利益な契約であってもよく判断ができずに契約を結んでしまい、悪徳商法の被害にあうおそれもあります。

このような判断能力の不十分な方々を保護し、支援するのが「成年後見制度」です。
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とのことです。

親がボケ(認知症)てきたら成年後見活用すべし?

では、親に認知症の傾向が出てきたら、成年後見制度を活用すれば万事うまくいくのでしょうか?
成年後見制度は「良い」制度と考えて、積極的に活用を検討するべきでしょうか?

相続の現場を担っている実務家の立場としては、これに対しては明確に「ノー」と答えます(ケースによっては有効に機能することもありますが、親が認知症というケースではその多くがノーでしょう)。

親の認知症のケースに限っていえば、成年後見制度は、なるべくなら活用しない方が、本人・寄り添う立場の人間・家族全体にとってベターな事が多いです。

金融機関や司法書士から、「成年後見」をつけてもらわないと取引出来ないと言われて初めて仕方なく活用するのが、現在の成年後見制度の、一般的な上手な(?)活用方法です。

成年後見制度のデメリット

成年後見制度を活用するには、一般的には家庭裁判所で手続きを行います。
つまり、家族の中に裁判所が関わってくるということです。

また、親の成年後見人には、長男などの家族が就任するケースや、裁判所が選任した税理士等の士業が就任するケースがあります。

どちらにしても、成年後見人というのは、「被後見人である親の保護だけ」を目的とする制度ですので、その趣旨に反する一切の支出が禁じられています。

例えば、下記がほぼ実行不可能となります。
・子や孫への生前贈与(お年玉も不可)
・未利用地の有効活用としてのマンション建設
・不動産の有効活用としての買い替え

つまり、「不動産を含む資産はほぼ凍結状態」となり、例え親も望んでいたとしても「相続対策はほぼ実行不可能」となります。

家族全員がハッピーとなるであろう相続対策であったとしても、裁判所としては、「相続人が納税義務者である相続税の節税対策は、親の保護の観点からは実行禁止」と判断されてしまうのです。

ちなみに、範囲外の支出を行った場合には、成年後見人である例えば長男は善管注意義務を問われ、損害賠償や刑事上の責任までをも問われる可能性があります。

家族のハッピーに法律論は不要!

つまりは、裁判所の頭の中では、「親の財産を活用した相続対策」と「親の財産の横領や使い込み」は、イコールなのです。

そもそも、和の精神が基本な日本の家族社会に、法律論(この場合、成年後見制度であり家庭裁判所)を持ち込んでしまったことがナンセンスだったのだと思います。

こういったケースでは、成年後見人をつけるとデメリットが大きいということを知っておいてください。(ケースによっては、成年後見を付けざるを得ない場合や成年後見で救われる場合も稀にあります。)

5年前から警笛を鳴らしてきましたが・・・もうはっきり書いていいでしょう

実は今回の内容は、今まで何度か記事に書いてきた内容のリバイバルです。

相続の相談や申告書作成という相続の現場で仕事をしていく中で、再度強くお伝えしておかないといけないと思い、今回の記事としました。

以前はだいぶオブラートに包んで書いていましたが、昨今の「成年後見制度を安易に利用してしまったが故のトラブル事例」を頻発にみるにつけ、今回ははっきりと大声で言っておきたいと思います。

安易に成年後見制度を利用してはいけません。
(法改正などでの早急な対応をお願いしたいです。)

この話が経営者・資産家の皆様のお役に立つことができれば幸いです。

メール通信№613


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