中小企業の事業承継税制が変わる!パート1
(注)執筆当時の法律に基づいて書いていますのでご利用は自己責任でお願いします。
もくじ
中小企業の事業承継の現場の声
中小企業における「株式」というのは、基本的に換金性がありません。
しかし業歴が長く業績が好調な会社ほど、相続税を計算するときにおける「株価」は高騰する傾向にありますので、結果、相続税を支払うための現金が不足するということになります。
原則的に株式の所有割合というのが決定的にその会社の支配権を決めるので、その株式は通常事業承継する人が引き継がないといけません。
一方、一般的な中小企業では、個人資産を会社の事業の用や担保に供していることが多いです。
更には、経営者やその一族が会社の借入に対して個人保証を行っていたり、会社の資金不足時には運転資金を貸し付けたりしていることもよくあります。
こういったことからも、経営者一族における円滑な事業承継が望まれます。(もちろん経営者一族以外の方が事業を承継していくという場合もありますが)
しかし、現状では、がんばって会社の業績を伸ばせば伸ばすほど株価が高騰して相続税負担が増加するため、業績アップを控えようというなんとも不合理な企業行動を招きかねない状況です。
実際、「中小企業における事業承継の現場」ではそれに似たようなことが既に起こっています。
事業承継税制が変わる!(自社株に係る80%納税猶予)
そこで平成20年度税制改正大綱においては、「(中小企業における事業承継税制の抜本拡充を図ることによって)中小企業の事業の継続・発展に際しての障害を除去(相続税負担の大幅な減少)することが可能となり、地域の雇用確保、経済活力の維持が実現」されることが目的であるとしています。
ここで大事なのは、単に中小企業経営者の事業承継時における相続税負担を大幅緩和することが目的なのではなくて、「地域の雇用確保や経済活力の維持」を図ることが大きな目的となっている点です。
大綱においても、「事業承継税制の抜本拡充は、単に事業承継の円滑化を実現するのみならず、事業継続要件の設定により、真の意味で地域の雇用確保、更には経済活力の維持に向けた特効薬となる」とあります。
こういった部分の影響が、この後にみていく「適用要件」にも表れています。
10%減額から80%納税猶予へ
現行では、非上場株式等に対する優遇措置は小規模宅地等の80%評価減と異なり10%評価減とされています。
そしてこれを、現行の10%減額から80%納税猶予に大幅拡充するとともに、対象を中小企業全般に拡大するとあります。
適用時期としては、平成21年度税制改正にて創設し、経営承継円滑化法の施行の日(平成20年10月予定)以降の相続に遡って適用することとなっています。
現行制度である「自社株に係る10%減額措置」とは、対象会社の要件を「発行済株式総額20億円未満の会社」としています。
また、減額措置の上限として、「相続した株式のうち、発行済株式総数の2/3又は評価額10億円までの部分のいずれか低い額」となっています。
しかしこれでは、より優良(業績好調)な中小企業は対象から外れてしまいますよね。
そこで、今回の税制改正項目である「自社株に係る80%納税猶予」では、まず対象会社の要件を、「中小企業基本法上の中小企業」としています。
中小企業基本法上の中小企業とは、例えば製造業であれば資本金3億円以下又は従業員数300人以下、小売業であれば資本金5,000万円以下又は従業員数50人以下となっています。
詳しくは、以下図1をご覧ください。
また、発行済株式総額の要件は撤廃し、軽減対象となる株式の限度額も撤廃することとなっています。
但し、発行済株式総数の2/3以下という限度は設けられています。
図1(中小企業基本法上の中小企業の定義)
資本金 | 従業員数 | ||
製造業その他 | 3億円以下 | 又は | 300人以下 |
卸売業 | 1億円以下 | 又は | 100人以下 |
小売業 | 5千万円以下 | 又は | 50人以下 |
サービス業 | 5千万円以下 | 又は | 100人以下 |
とはいえ、どの会社でもこの新しい事業承継税制である「自社株に係る80%納税猶予」を活用したほうがいいのか?というとそういうわけではありません。
この新しい事業承継税制には注意点が2つあります。
詳細は次回「中小企業の事業承継税制が変わる!パート2」にてお伝えします。(今回の内容はプリーティ5月号に投稿した記事に加筆修正した内容となっています。)
今日の話が少しでも経営者の皆様のお役に立つことができれば幸いです。
メール通信№85
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