税金は時に、『損して得取れ!』
(注)執筆当時の法律に基づいて書いていますのでご利用は自己責任でお願いします。
もくじ
間違いだらけの事業承継対策・相続対策
中小企業の事業承継対策(例えば親から子へ)や相続対策の相談を受ける中で、多くの失敗事例を目にします。
事業承継であれば「高騰した自社株に対する納税資金不足、事前対策不足」、相続であれば、「相続対策名目のアパート投資の失敗」などです。
これらうまくいかなかった事例に共通するのは、甘い話に乗ってしまうといった「短期的な利益」に目を奪われてしまうケースです。
税金は、時に、短期的には損に見えるようでも、長期できっちり得をするといった事例があります。
今回は、そんな税金における「損して得取れ!」といった事例を3つご紹介します。
相続税ではなく贈与税をあえて先に払ってしまう
中小企業の場合、自社株を例えば父親から長男に承継する場合に、業歴が長く業績が良い会社ほど、株価が高騰してしまっています。
相続税のシミュレーションを税理士等にお願いして、その評価を見ると、多くの方は驚かれます。
〔よくある中小企業の事例〕
設立当初1株500円×20,000株=1,000万円
↓
現在1株25,000円×20,000株=5億円(50倍になったケース)
↓
この自社株5億円に対する相続税が例えば2億円
自社株を長男が承継しても、手元にお金は一切入ってきません。
これに対して、相続税2億円は通常払えません。(この場合にも色々と手法はありますが、今回は割愛)
そこであえて、相続税を待たずに、お父様が引退する時に退職金を支給する等して株価を下げて、そのタイミングで、相続時精算課税贈与を使って長男に自社株を贈与して贈与税を払うのです。
相続時精算課税贈与を使うと、2,500万円までは贈与税0円で、それを超える贈与に対しては一律20%となっていますが、最終的にはその贈与が無かったものとして、相続時に再計算されます。
しかし、相続時精算課税贈与を行う最大のメリットは、「贈与時における低額な株価で固定」されることです。
つまり、多額の退職金支給や、多額の設備投資等で株価が下がったタイミングで、相続時精算課税贈与をすると、その後その会社の株価が高騰しても、その下がった株価を相続時にも使えるのです。
現在弊社でこの手法を使って行っている事業承継対策においても、税額ベースで10億円ほどの節税となっていますが、事前に贈与税を1億円程払ってもらっています。
まさに、損して得取れ、です。
あえて特例を使わない
地主さん等がお持ちの不動産を売却等して、他の不動産に買い換えたり、等価交換という手法でその上に建設予定のマンションの一部と交換を行ったりすることがあります。
こういった場合には、税務では、買換えの場合でも交換の場合でも、一旦不動産を売却したと考えて、その利益に対して概ね20%の税金がかかります。
しかし、担税力を考慮して、特例が設けられています。
この特例を使えば、売却時の税金を大幅に軽減できますが、その代わりに、例えば買い換えた賃貸建物における後の不動産所得における減価償却費が低額になったりします。
多くの方は、目先の売却における税金を軽減したいがために、買換え特例や交換特例を選択されます。
それによって、売却時の税金は急減しますが、「ちょっと待って下さい!」
不動産を多数お持ちの場合は、税率が住民税も入れて50%になっている方もおられます(平成27年より55%に最高税率アップ)。
このような方の場合、来年以後行っていかなければならない毎年の不動産所得で、減価償却費がほとんど計上できないがために、税率50%(あるいは55%)の税負担を強いられることになります。
このような場合は、あえて、売却時に「特例を使わない」
という選択肢が有効に働くことが多いです。
これも、損して得取れの1つでしょう。
ふるさと納税も、損して得取れ?
最後に、ふるさと納税を使った寄付も、一種の「損して得取れ」ではないでしょうか。
ふるさと納税とは、例えば、市区町村などに10万円寄付をすると、確定申告を通じてそのほぼ全額である9.8万円が節税となり、更に、その寄付先の市区町村などから、5-7万円相当の肉や米やフルーツ等の特産品が無料で送られてくるという制度です(その方の年収により最適寄付額は異なります)。
注1「ふるさと」といいながら、実はふるさとでなくてもどこでもOK
注2「納税」といいながら、実は寄付制度
注3「本来の制度趣旨」は、税金使途を自分で決められる事等ですが今回は省略
先に現金で市区町村に寄付しないといけませんが、後に、確定申告を通じて寄付金控除を受けられたり、地方の特産品が送られてきたりします。
〔年収別、節税最適寄付額の目安〕
年収500万円 25,000円
年収700万円 44,000円
年収1,000万円 84,000円
年収1,500万円 180,000円
年収2,000万円 265,000円
年収3,000万円 500,000円
年収5,000万円 900,000円
年収1億円 1,800,000円
例えば、年収3,000万円の社長なら、今年中に50万円寄付(自己負担2,000円)して、特産品がたぶん30万円分ぐらい自宅に届きます(あくまで目安です)。
ふるさと納税をするというのも、税金における損して得取れの1つかもしれません。
【参考「ふるさと納税ポータルサイト」】
http://www.furusato-tax.jp/
この話が経営者・資産家の皆様のお役に立つことができれば幸いです。
メール通信№408
Copyright all rights reserved By マネーコンシェルジュ税理士法人
その他の最新税務関連ニュース
大阪税理士コラムのカテゴリー一覧
経営支援(認定支援機関・経営革新等支援機関) > 一覧
カテゴリー別
税務情報を「メール通信」「FAX通信」「冊子」でお届け。
中小企業の経営者及び総務経理担当者・相続関係者向けに、「知って得する」「知らないと損する」税務情報を、メルマガ、FAX、冊子の3種類の媒体でお届け。
配信日時などの詳細は下記をクリックしてご確認下さい。
※会計事務所の方はご遠慮頂いております。
今なら初回面談無料!
お気軽にお問い合せください。
0120-516-264受付時間 9:00~17:30(土日祝休)