消費税の事業者免税点制度をめぐる会計検査院からの報告書

(注)執筆当時の法律に基づいて書いていますのでご利用は自己責任でお願いします。


現行の免税事業者制度の概要

消費税については、消費一般に幅広く負担を求めるという課税の趣旨等の観点から、免税事業者を極力設けないことが望ましいとされている。一方、小規模事業者の事務処理能力等を勘案して、事業者免税点制度が設けられている。

現行制度では、当事業年度の課税売上高が1,000万円を超えた場合に翌々事業年度から課税事業者となり、課税売上高が1,000万円以下の場合には、翌々事業年度は免税事業者となる。

また、新設法人については設立2年以内における納税義務の判定基準として、基準期間の課税売上高に代えて資本金を採用し、その事業年度開始の日における資本金1,000万円未満の法人を免税事業者としている。 

問題点の指摘

会計検査院から、この10月に同制度についての報告書が提出された。

従前から資本金1,000万円未満の新設法人において、設立当初の第1期事業年度から相当の売上高を有する法人や、設立2年以内に事業者免税点制度を利用した租税回避等を行っている法人が見受けられている。さらに、平成18年5月に会社法が施行されたことにより、最低資本金制度が撤廃され、少額の資本金でも容易に会社を設立することが可能になっている。

このような状況を踏まえ、事業者免税点制度が有効かつ公平に機能しているかに着眼して検査したところ、新設法人の納税義務の判定を基準期間に代えて資本金により行っていることにより、次のような状況となっていた。

(1)資本金1,000万円未満の新設法人において、設立2年以内の事業者免税点制度の適用を受けている法人のなかに、設立当初の第1期事業年度から、相当の売上高がある法人が相当数見受けられた。

(2)個人事業から法人成り後も相当の売上高があるのに、第1期及び第2期課税期間において免税事業者となっている法人が相当数見受けられた。

(3)1,000万円未満の資本金で法人を設立し、第2期事業年度開始の日の翌日以降に増資を行い資本金を1,000万円以上にすることなどのより、第1期及び第2期課税期間において免税事業者となっている法人が見受けられた。

(4)設立2年以内に事業者免税点制度の適用を受けた後の第3期事業年度以降に、解散等している法人が見受けられた。

第2期事業年度については規制できるが・・・

平成23年6月に、事業者免税点制度を悪用した法人の設立等による課税逃れを抑制する観点から、課税売上高が1,000万円を超えることが事業年度の途中で明らかとなった場合に、翌事業年度からから課税事業者とする改正がされた。

しかしながら、第1期事業年度の納税有無については、事業年度開始の日における資本金で判定することになる。例えば、大会社が資本金1,000万円未満で設立した子会社については、第1期の売上高が5億円あったとしても、同制度の適用を受けることができてしまう。

そこで、会計検査院としては、「検査によって明らかになった状況が十分に解消されるに至っていない、今後とも事業者免税点制度を含む消費税全般について、引き続き注視していくこととする」としている。昨今、会計検査院からの指摘により改正に至るケースが多いので、今後の動向に注目していただきたい。

税務ニュース№251


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