短期前払費用の特例、原則と注意点

(注)執筆当時の法律に基づいて書いていますのでご利用は自己責任でお願いします。


決算期末直前の節税対策、短期前払費用の特例

9月は3月決算法人の中間決算月であり、9月決算法人というのも比較的多い。とかく不景気という言葉が飛び交っているが、決して赤字法人ばかりというわけではなく、中小企業でも順調に利益を上げているところはあり、節税対策の相談を受けることもある。

そんなとき、決算期末直前の節税対策として、「短期前払費用の特例」の活用が考えられる。前払費用というのは、来期の経費の前払いであるから、原則的には当期の損金にはならない。

ただし、一定の要件を満たした前払費用については、「支払った日から1年以内に提供を受ける役務に係るものを支払った場合において、その支払った額に相当する金額を継続してその支払った日の属する事業年度の損金の額に算入しているときは、これを認める。」(法人税法基本通達2-4-14)とされている。

この特例の代表例としては、家賃や保険料の前払いが挙げられる。特に保険料については、決算期末に年払いで保険料を支払う、という節税対策はよく知られているが、その根拠となっているのが、この「短期前払費用の特例」である。

適用上の注意点と“大原則”

この特例を利用するに当たっては、いくつか注意点がある。

まずは支払時期の問題である。上記通達には「支払った日から1年以内に提供を受ける役務」とあるため、これを満たすことが必要となる。例えば、9月決算法人が翌期10月~9月までに提供を受ける役務に対する費用を8月に前払いした場合には、上記要件を満たさないため、特例の適用は認められない。この場合、支払時期は9月末でなければならない。

また、提供を受ける役務の内容についても、等質等量のものでなければ前払費用とはならないため、例えば、広告費を前払いしても、この特例の対象とはならない。

この特例を適用する上で、根本的に最も大事なのは、その前払費用自体の重要性である。そもそもこの特例は、少額の費用まで全て前払費用として計上することに対する事務処理の煩わしさを考慮して設けられている。そのため、あまりにも多額の前払いについてこの特例を適用することは上記の趣旨に反することになる。適用するに当たっては、そのあたりも十分に注意して頂きたい。

特例適用にはデメリットもあり

尚、この特例にはメリットだけでなく、デメリットもある。結果的には、来期の経費を先取りしているに過ぎないため、節税効果があるのは最初の1回目だけである。2回目以降は節税にはならないが継続適用が条件とされているため、少なくとも1年でやめるというわけにはいかない。

また、家賃の前払いの場合には、先払いしてしまうと事実上、移転ができなくなるなどのデメリットもある。目先の節税のみにとらわれず、長期的視野で判断して頂きたい。

税務ニュース№192


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