節税対策集102 2006.9.20
分掌変更等の役員退職金
▼拝啓 中小企業の社長様
2007年には、団塊の世代の一斉退職の開始が予想されています。しかしサラリーマンと違い、中小企業の社長の平均退職年齢は70歳前後です。「完全に会社から手を引くには少し早いが、そろそろ体力も限界かな」などと考えておられる中小企業の社長様も多いのではないでしょうか。
そのような社長様には、通称「分掌変更等による役員退職給与」という支給方法が税務上認められています。その詳しい説明に入る前に、まず退職金の有利な点をいくつかご紹介しておきましょう。
▼退職金のメリット
1. 退職所得控除額
退職金に対する所得税を計算する上で、退職金の金額から退職所得控除額が控除できます。この退職所得控除額は勤続年数によって決まり、勤続20年で800万円、30年で1,500万円、40年で2,200万円にもなります。退職金がこの金額以下であれば、所得税は全くかかりません。
2. 退職所得に対する所得税率
退職金に対する所得税率は、他の所得に対する所得税率の半分になります。
3. 死亡退職金に対する相続税の非課税
万が一、社長等が死亡した場合には、社長等の死亡退職金のうち、「500万円×法定相続人の数」までの金額に対しては、相続税がかかりません。
4. 死亡弔慰金に対する相続税の非課税
3の場合、業務上の死亡であれば月給の36か月分、それ以外の死亡であれば月給の6か月分の弔慰金を無税で支給することができます。
5. 個人事業者時代の勤続年数を通算して支給することも可能
個人事業者が法人成りした場合には、個人事業者時代の勤続年数を通算して支給する旨の退職金規程を作成しておけば、原則として支給した全額が法人の経費として認められ、かつその全額が本人の退職所得になります。
▼分掌変更等による役員退職給与とは
では、分掌変更等による役員退職給与とはどのようなものでしょうか。法人税法基本通達9−2−23では、役員退職金が損金に算入されるケースとして、次の3つを例示しています(※1)。
(1) 常勤役員が非常勤役員になったこと
(2) 取締役が監査役になったこと
(3) 分掌変更後における報酬がおおむね50%以下になること
つまり、例えば代表取締役が非常勤取締役となり、報酬を半額以下に設定すれば、その代表取締役に支払う退職金は会社原則として損金算入できることになります。実際に退職する前に退職金として損金算入できるのですから、経費の前倒しとはいえ、節税に有効な方法です。
▼同族会社では要注意!
ただし、この制度は節税のために形式的に利用されることも多く、無条件で認められるわけではありません。その金銭を受け取った本人が、「実質的に退職したと同様の事情にある」と言えるのかどうかが焦点になります。
先日、京都地裁にて分掌変更等により役員に支払われた金銭が、役員退職金に該当するかどうかが争われていた裁判でも、法人税法基本通達9−2−23の要件を満たしていたからといって、無条件に役員退職金に該当するわけではない、という判断が示されています(平成16年(行ウ)第34号、大阪高裁に控訴中)。
今回の判例により、同族会社での適用についてはこれまで以上に特に慎重を期する必要があります。
(※1)法人税法基本通達9−2−23 (役員の分掌変更等の場合の退職給与)
法人が役員の分掌変更又は改選による再任等に際しその役員に対し退職給与として支給した給与については、その支給が、例えば次に掲げるような事実があったことによるものであるなど、その分掌変更等によりその役員としての地位又は職務の内容が激変し、実質的に退職したと同様の事情にあると認められることによるものである場合には、これを退職給与として取り扱うことができる。
(1) 常勤役員が非常勤役員(常時勤務していないものであっても代表権を有する者及び代表権は有しないが実質的にその法人の経営上主要な地位を占めていると認められる者を除く。)になったこと。
(2) 取締役が監査役(監査役でありながら実質的にその法人の経営上主要な地位を占めていると認められる者及びその法人の株主等で令第71条第1項第4号(使用人兼務役員とされない役員)に掲げる要件のすべてを満たしている者を除く。)になったこと。
(3) 分掌変更等の後における報酬が激減(おおむね50%以上の減少)したこと。
(担当:村田)
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